<社説>子どもの貧困 雇用の構造改善が急務だ


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 子どもの貧困が世代を超えて続く沖縄の深刻な実態があらためて浮き彫りとなった。私たちはこの負の連鎖を何としても断ち切らなければならない。

 県が小中学生と保護者らを対象に実施した「沖縄子どもの調査」で、15歳の時に生活が「大変苦しかった」と答えた保護者のうち、現在でも困窮経験があると答えた人が4割以上に上った。ショッキングな数字だ。
 中学2年の保護者で見ると、15歳時に生活が大変苦しかった人のうち、過去1年間に経済的な理由で食料を買えない経験があったという回答は実に47・2%、同じく衣料を買えなかったのは64・1%にも上っている。
 県が1月に発表した沖縄の子どもの貧困率は29・9%だ。全国平均の16・3%(2012年)に比べて極めて深刻な状況にある中、困窮世帯の子や孫にも貧困が継続されていくという傾向はかねて指摘されていた。
 その実態が具体的なデータで示された。根深いこの問題の解決に向けた一歩としなければならない。詳細調査を継続して実態解明を進めると同時に、貧困解消に向けたあらゆる施策を複合的に展開していくことが求められる。
 調査では父親の年間収入が300万円未満の層では8割強の母親が就労していた。沖縄の母親たちの就労率の高さが明らかになる一方で、母親の収入がその世帯の貧困の緩和には十分寄与していない実態も浮かび上がっている。
 県民所得が全国最下位の水準にある中、夫婦で共働きをしても多くの世帯は貧困から抜け出せていないという深刻な状況がうかがえる。沖縄は非正規雇用率も44・5%(総務省12年調査)と全国で最も高い。
 低賃金や重労働、就労安定化など、沖縄の雇用をめぐる構造的な問題の解決に向けた取り組みを官民挙げて強力に推し進めていくことこそが、子どもの貧困問題の抜本的な解決には不可欠である。この機会にそれを明確にしておきたい。
 その上で困窮世帯に対して即効性のある支援策を重層的に打ち出す必要がある。調査からは、貧困が学びの機会の喪失にもつながっている厳しい現実も明らかになった。生活保護などの支援策と併せて、無料塾や給付型奨学金など児童や生徒への学習支援策を今こそ大胆に拡充すべきだ。