<社説>手話言語条例成立 国も法整備に取り組め


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 手話を言語として認め、その普及を目指す「県手話言語条例」が県議会本会議で全会一致で可決、成立した。県民こぞって手話の普及に取り組み、ろう者と交流する機会を広げ、相互理解を深めたい。

 聴覚に障がいのある人がストレスを感じずに意思疎通できる環境を広げる上で、条例は大きな意義がある。手話普及に向けた取り組みは健常者の障がい者に対する理解にもつながる。条例制定を高く評価したい。
 県は今後、ろう者や学識経験者らで構成する県手話施策推進協議会を設置する。活発な議論を通して、手話普及に有効な施策を推進計画に盛り込むことを期待したい。
 条例は県に対し、市町村と連携して手話を学ぶ機会の提供、手話通訳者の養成、学校教育における手話普及に向けた取り組みへの支援などに努力するよう求めている。
 ろう児らが通学する学校の設置者には、ろう児とその保護者に手話学習の機会を提供し、教職員の手話技術向上にも必要な措置を講ずるように努めることを求めた。
 いずれも共生社会の実現には不可欠な事項である。だが相応の財政措置ができなければ、条例を生かすことは難しくなる。全国で手話を普及させるためにも、国の責任と財政措置を明記した法整備が必要だ。
 障害者基本法は、全ての障がい者が可能な限り手話を含む言語などを選択できるようにすると定めている。付則では、障がいに応じた支援体制の在り方を検討し、必要な措置を講ずることを国に課している。にもかかわらず国は「手話だけの法律を作る動きはない」とし、手話の普及に必要な措置を講じることに消極的である。
 振り返ってみてほしい。日本のろう教育は相手の口の動きで会話を理解する「口話法」を奨励し、手話は学校では排除された。手話が教育手段として位置付けられたのは1990年代初めだが、手話は今も教科にはなっていない。
 条例素案に対する意見公募には「ろう者の言語である手話が禁止され、手話を学ぶ場が奪われたことにより、ろう者の尊厳が傷つけられた」などの声が寄せられている。国は過去の誤りを反省すべきである。
 国に「日本手話言語法」の制定を求める意見書は、国内1788の全地方議会で採択された。これだけの民意を無視することは許されない。