<社説>差別解消法施行 障壁なくし共生社会築こう


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 障がい者に対する差別的扱いをなくし、誰もが生きやすい社会を目指す「障害者差別解消法」が施行された。

 この法律が機能するためには、県民が広く理解することが重要だ。障がいのある人もない人も互いにその人らしさを認め合いながら多様性のある共生社会を築きたい。
 2006年に国連で「障害者の権利に関する条約」が採択され、障がいのある人の社会参加が世界的な流れになってきた。特に「障がいがある」という言葉の捉え方が変わったことが重要だ。これまで「障がいがある」とは心身の不具合のことを指したが、現在は社会的な障壁によって心身の不具合がある人の社会参加が妨げられている状態と考えるようになった。
 しかし、残念ながらまだ社会の障壁が共生社会を阻んでいる。県内の障がい者が、実際に障がいを理由にアパートを借りることができなかったり、銀行口座の開設を断られたりした体験を明かしている。精神障がい者は航空運賃や高速道路料金など公共交通の運賃割引対象になっていないことに対しても、関係者から不平等との指摘がある。
 施行された差別解消法は国や地方自治体や民間事業者に対し、障がいを理由にサービスの提供を拒否するなどの「差別的扱いの禁止」を法的義務として定めた。
 さらに建物をバリアフリーにしたり、学校で机の高さを変えたりするなど個々の障がいに応じた「合理的配慮」を行政機関に義務付けた。「合理的配慮」とは「特別扱い」や「優遇」と違い、健常者と同様のサービスを受けるために必要な配慮と位置付けている。民間事業者には「努力義務」としているが、法律の趣旨を生かすため、企業には一歩踏み込んだ対応を求めたい。
 障がい者の身近な相談に対応するため、国は自治体に対して「障害者差別解消支援地域協議会」の設立を促している。しかし、設置済みか9月末までに設置予定なのは480市区町村で全体の28%止まりだ。
 沖縄県は既存の「県自立支援協議会」の部会に「権利擁護部会」を新設して地域協議会の役割を持たせる。既に県内33市町村が自立支援協議会を設置しているため、地域協議会新設より既存の組織を有効活用する方法もあるだろう。何らかの形で全市町村で早期設立を求める。