<社説>県民意識調査 政権は民意と向き合え


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 「県内移設も固定化も認めない」。県民の思いが数字に表れた。県が実施した2015年度「地域安全保障に関する県民意識調査」で、米軍普天間飛行場の辺野古移設に対して58・2%が反対と答え、賛成する25・5%の倍以上になった。普天間飛行場の固定化についても「容認できない」が68・6%と圧倒的だ。「容認できる」は6・7%にすぎない。

 県民意識調査結果から言えるのは、米軍普天間飛行場を閉鎖し、県内移設でない新たな選択を模索すべきだ、というのが県民多数の意思ということだ。「辺野古が唯一」と繰り返す安倍政権は、真剣にこの結果と向き合い、沖縄の民意を尊重すべきだ。
 安倍晋三首相は、3月31日の日米首脳会談でもオバマ大統領に「(辺野古が)唯一の解決策である立場は不変だ」と重ねて強調した。しかも今回は「不変」という従来より強い表現を使った。在沖海兵隊の実戦部隊を海外に後退させる計画がある中、辺野古移設に固執し、新基地を沖縄に造ろうとする態度は理解し難い。基地は沖縄に押し付けておけばいいという差別意識すらうかがえる。
 そうした政権の本質は県民に見透かされている。本来、国民が等しく負うべき安全保障上の負担を「沖縄問題」とすり替え、国民の目をそらし続けてきたからだ。意識調査で「沖縄の基地問題は本土の人に理解されていると思うか」という質問に、県民の82・9%は「理解されていない」と答えたことが、それを示している。
 例えばオスプレイの訓練移転で、候補地の佐賀県が反対すれば、政府は即座に撤回した。沖縄の全首長が反対しても配備を強行したのと対照的だ。こうした政府の二重基準が、沖縄への基地押し付けにつながっているのは明らかだ。
 そもそも沖縄に基地が必要なのか。意識調査の「わが国の安全保障政策として何が最も重要か」への回答で「他の国・地域との信頼・協力関係の強化」58・6%が最多となり、「軍備増強」を大きく上回った。
 政府は拡大する中国の軍事力を念頭に、宮古・八重山地域に自衛隊部隊を増設しようとしている。だが国境を接する県民が望むのは、力での対抗ではなく、話し合いによる平和的解決だ。辺野古移設や自衛隊配備を強行しようとするなら、ますます民意との溝が深まることを政府は自覚すべきだ。