<社説>女性活躍推進法 非正規雇用にも目を向けよ


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 企業や自治体に女性の登用目標など行動計画の策定・公表を義務付けた女性活躍推進法が全面施行された。少子高齢化で労働力不足が懸念される中、採用数や管理職を増やして女性の労働力を高めるのが狙いという。女性が能力を発揮できるよう社会が支援することは喜ばしいが、懸念もある。

 推進法は従業員301人以上の企業に対し、女性をめぐる状況を把握した上で、数値目標の設定などを示した行動計画を作るよう求めている。
 厚生労働省が規定する状況把握の必須項目は女性採用比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、女性管理職比率である。
 この4点を見る限り、正社員として採用され、結婚や出産を経ても働き続ける女性を主眼に置いているのが分かる。
 しかし女性の活躍を阻んでいるのは採用数や管理職の少なさだけではない。多くの女性にとって切実な問題は男女の賃金格差や非正規が多い雇用形態、そして根強く残る性別役割分担意識である。
 厚労省の2014年調査によると、男性の月給を100とすると女性は72・2だ。総務省の15年調査では男性の78・1%は正規雇用だが、女性は43・7%で半数以上が非正規雇用である。非正規雇用の女性たちは賃金が低く抑えられ、産休や育児休業を取るのも難しい傾向がある。半年前に改正された労働者派遣法は企業の派遣受け入れ期間の制限を事実上なくした。正社員から派遣労働への置き換えが懸念されている。
 さらに大きな問題は家事、育児は女性の仕事だとする性別役割分担である。多くの働く女性たちが職場では男性と同程度の労働成果を求められ、家では家事、育児の主体を担う。実際、多くの働く女性たちは睡眠時間を削って仕事と家事育児をこなしている。
 法施行に当たって、衆参両院が男女の賃金格差の把握や非正規労働者の待遇改善、性別役割分担意識の払拭(ふっしょく)を付帯決議としたことは、この法律に足りない視点があることを示している。
 安倍政権は女性が輝く社会を目指すとしている。だが、わずか一握りの「輝く女性」の陰で、低賃金で家事と育児と仕事の負担にあえぐ大多数の女性がいる社会は真の活躍社会ではない。多数派である非正規労働の女性たちに目を向けた施策が必要だ。