<社説>無許可民泊増 県独自の条例制定が必要だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県内で旅館業の許可を得ていない民泊施設が増えている。

 無許可で営業する民泊施設は分譲マンションや賃貸マンションなどにあり、入居者とのトラブルも発生している。不特定多数の人が出入りするため、旅行者と知らない住民から不安を感じるとの相談が行政機関に寄せられている。
 国際観光都市を目指す沖縄県にとって、安心安全な宿泊環境の整備は不可欠だ。無許可民泊施設をなくすため県独自の条例制定をはじめ、宿泊施設を貸す「ホスト」の意識改革が求められる。
 個人所有の空き家・空き室と旅行者を仲介する米国サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」に登録する県内の宿泊物件のうち、那覇市内の登録軒数は200軒を超えるが、2015年3月末現在、那覇市内の旅館業(簡易宿所)の許可施設は96軒にとどまっている。
 民泊施設が増加する要因には、外国人観光客の増加による宿泊施設へのニーズの多様化がある。日本政策投資銀行関西支店の調査によると、訪日経験者の12・1%は日本で民泊を経験しており、今後、訪日を希望する人の26・8%は「利用したい」と回答した。民泊は宿泊施設不足を解消するだけでなく、宿泊形態の新しい選択肢の一つといえる。
 政府は宿泊施設不足を解消するため、今月1日から民泊施設の面積基準を緩和して旅館業法の許可を取りやすくした。しかし、宿泊施設不足の解消が必要だからといって、旅館業法のハードルを安易に下げるのは疑問だ。
 むしろ近隣住民とのトラブル防止策や発生時の対応、違法民泊の仲介や広告の禁止といった仲介業者に対する規制など法律の整備を急ぐべきだ。
 東京都新宿区は独自の条例を制定してフロント設置を規定している。「定員5人以下で便器は二つ」「浴室を男女別に一つずつ」などのルールも設けている。沖縄も参考になるだろう。
 一方、県内では修学旅行生を対象にした「ホームステイ型」の民泊が盛んだ。家主と同居する体験型の民泊は、簡易宿泊所では味わえない沖縄独自の文化に触れる機会を提供する。民泊事業の先進地として注目を浴びる伊江村は年間約5万人が訪れる。
 それぞれの島の魅力を引き出して、沖縄独自の民泊ブランドを確立したい。