<社説>低額塾閉鎖 継続へ行政の支援を


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 貧困の連鎖を断ち切るための、地道な支援が打ち切られてしまうのはやるせない。何とか復活できないものか。

 2008年度から続けられていた低料金の小中学生向け学習支援塾「ユイマール塾」の大部分が15年度限りで閉鎖となった。
 県対米請求権事業協会が実施していた事業だ。講師料や教室使用料などの助成を受け、地域の退職教員らが各地で立ち上げ、運営してきた。当初は離島やへき地の格差解消が目的だったが、都市部にも拡大、14年度には12市町・34塾に達していた。
 当初は12年度までの5年間の時限事業だったが、継続の要望を受けて3年間延長していた。しかし基金の運用益で営む同協会の事業予算全体が縮小しており、これ以上の継続は不可能と判断した。
 塾は小学生で月4千円、中学生で6千円と安価な上、生活保護世帯と住民税非課税世帯には半額補助があり、低所得世帯の子どもたちにとって貴重な学びの場だった。「ここがなければ合格できなかった」と話す高校生もいる。
 非行は帰宅後の寂しさが一因とも指摘される。してみると塾はその予防策にもなっていたのではないか。このまま失っていいのか。
 県の沖縄子どもの調査によると、子ども時代に貧しかった人が親になった現在も貧困に苦しむ例は4割を超す。貧困の世代間連鎖の傾向は鮮明だ。同じ調査で、年収200万円以下の父親は大卒で約1割、高卒で3割弱なのに対し中卒は6割に上る。貧困の連鎖を断ち切るのに教育が鍵を握るのは、このデータからも明らかだ。
 ユイマール塾の喪失は子どもの貧困をなくす取り組みに逆行する。とはいえ対米請求権事業協会も延長するなど努力してきた。同協会だけに頼らず社会全体で向き合うべきだ。行政の支援を求めたい。
 高校生向けの無料塾は県が21年度までに全市町村に設置する計画を立てている。これに加え、低所得世帯の小中学生向けとしてユイマール塾支援を位置付けてもらいたい。
 義務教育は基本的に授業料は無料だが、通学には他の費用もかかる。副教材や制服、体育着もばかにならない。とはいえ行政の予算も無限にあるわけではない。不要になった世帯から新入生に譲る仕組みを公的に設けてもいい。知恵を絞って効率化を図りつつ、次世代支援拡充の資金を捻出したい。