<社説>成年後見制度法案 意思決定支援策が最優先だ

 障がい者、高齢者の意思を尊重する制度づくりが必要だ。その観点から成年後見制度を検証し、問題点を改めることが先決だ。

 成年後見制度の利用促進に向けた基本計画策定を国や自治体に義務付けることや、成年後見人の権限を強化することを目的とした成年後見制度利用促進法案が今国会で審議されている。
 後見人の横領や着服の横行、国際条約との整合性など制度の問題点が指摘されている。今以上に後見人が障がい者らの意思決定に権限を持つような法制定には慎重であるべきだ。
 成年後見制度は認知症や知的・精神障がいなどで判断能力が不十分な成人に対し、財産の管理や契約行為を支援する後見人を付けるもので、2000年に創設された。背景にあるのは、急速に進む高齢化である。14年末で18万4670人が利用している。
 リフォーム詐欺など認知症が進んだ高齢者や障がい者を狙った犯罪を抑止する面で後見制度は一定の役割を果たしてきた。しかし、後見人による着服や横領などの事件も多発している。
 最高裁によると、未成年後見人も含む被害総額は14年の1年間で56億7千万円に上った。本県でも後見人の立場を利用した司法書士による横領事件が起きた。
 障がい者や高齢者の意思決定に後見人が権限を行使する制度を逆手に取るような犯罪は許されない。後見制度利用を促進する前に、障がい者や高齢者の意思決定を尊重し、それを支援する環境整備を急ぐ必要がある。
 成年後見制度は、14年に日本が批准した国連障害者権利条約との整合性も問われている。
 条約は障がい者個人の尊厳と自律の尊重を掲げ、意思決定の支援に必要な措置を採るよう各国に呼び掛けている。国連障害者権利委員会は成年後見制度のような「代行決定方式」は条約違反であるとの見解を示している。
 日本弁護士連合会も昨年10月の宣言で、成年後見制度には「意思決定の支援という点からは改革すべき課題がある」として、困難を抱える人の意思決定を家族や福祉・医療従事者が支えるための制度を求めている。
 認知症や障がいを理由に能力や権限を制限してはならない。高齢者、障がい者の意思決定を支援する制度整備が最優先だ。それに反するような法律は許されない。



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