<社説>新高3と選挙権 社会への信頼を培いたい


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 主権者意識とは、言い換えればコミュニティーに対する信頼であろう。所属する社会の中で、問題の解決策を論じれば、一定の合意を形成できるという確信。そしてそれを実行してもらえるという確信。つまりは「この社会は変えられる」と思えるか否かである。

 18歳選挙権の今夏適用を控え、本紙は新高校3年生と特別支援学校高等部3年生に対しアンケートをした。「投票に行く」と答えた人は5割に満たなかった。「分からない」も4割余に及ぶ。期待と困惑が相半ばする状況がうかがえる。
 それなら戸惑いを期待に変えられればいいのである。「この社会は変えられる」と実感してもらうことに尽きる。小さな成功体験を積み重ねるしかあるまい。
 「投票に行かない」「分からない」の最大の理由は「政治への理解が不十分」だ。合意形成の道筋を知らないという意味とも取れる。
 学校での主権者教育が鍵を握るであろう。地域社会で何が問題なのかを調べ、解決策を論じ、合意を形成し、実行する体験を積ませたい。どんな小さな課題でもいい。解決の過程を目の当たりにすれば、主権者意識はおのずと高まるのではないか。
 こうした主権者教育は今の教育課程ではなおざりのように見える。県内でも一部の中学・高校で自覚的に取り組んでいるが、広がっているとは言い難い。受験の成績に直結しないことが要因の一つだろうが、その重要性について保護者も含め社会全体で認識を深めたい。
 「1票で社会が変わるとは思わない」という意見が9%あったのも見逃せない。高校生たちが社会への信頼を失っているということである。課題解決型の体験学習がここでも有効なはずだ。
 同時にそれは、昨今の政治のありようへの根源的な批判でもあろう。「公約を守って」「汚職が多い」という声の数々が、政治不信の根深さを物語る。「政治家の問題が多い。不倫や国会で寝るとか」という声すら寄せられた。高校生たちは実によく見ているのである。
 公約を守らず、汚職まがいの行為をし、国会で寝るような政治家は、政治の表舞台から退場させられる。選挙でそんな結果を見せられれば、高校生たちもこの社会への信頼を取り戻すのではないか。今を生きる大人たちの、責任の取り方の一つであろう。