<社説>パナマ文書 解明したい税逃れの闇


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 一事務所から流出した文書が世界を震撼(しんかん)させている。通称パナマ・ペーパーズ(パナマ文書)。租税回避地への法人設立を代行する中米パナマの法律事務所モサック・フォンセカの内部文書のことだ。

 1977年から2015年までに同事務所が手掛けた記録1150万通が流出した。ロシアのプーチン大統領の友人やキャメロン英国首相の亡父、有名サッカー選手や俳優などが登場し、衝撃を与えた。資産隠し疑惑を追及されたアイスランド首相は退任に追い込まれた。
 これだけで済むはずがあるまい。登場する現旧各国首脳と親族は73人、他の政治家、政府幹部も128人に及ぶ。スノーデン氏による米国情報機関の大規模盗聴暴露をも上回る「史上最大のリーク」との声すら上がっている。
 この闇を徹底的に解明すべきだ。各国当局の追及を求めたい。
 それにしても情けないのは、日本からも400もの人や企業の名が出てきたというのに、菅義偉官房長官が早々と「(日本政府が捜査に乗り出すことは)考えていない」と否定したことだ。
 発覚を受け、オバマ米大統領は「国際的に大きな問題」と指摘し、米司法省は調査する方針を明らかにした。各国も同様だ。英国など、自国の首相が疑惑の渦中にあるのに、歳入関税庁が文書の調査に乗り出すと発表したほどである。
 調査に後ろ向き、または黙殺する構えの主要国は、習近平主席の親族が登場した中国とロシアくらいのものだ。脱税疑惑を調べることにこれほど後ろ向きでは、日本も民主国家とは呼べまい。
 なぜ租税回避地が問題か。社会の公正性を強く損なうからである。
 租税回避地に口座を開けるほどの財力があるのは、ほんの一握りの富裕層や大企業だろう。これらが税を回避した分、その国の税収は足りなくなり、収支を合わせるには増税するか行政・公共サービスを削減するかしかなくなる。
 自国での経済活動で得た利益は、その国の社会制度に守られて得たものである。納税する理由はそこにある。それなのに、最も担税力のある人々が税を逃れ、その分を他の多くの庶民や法人が負担するのである。これこそ不公正そのものだ。
 租税回避地への税逃れは70年代から急速に膨らんだ。新自由主義の広がりとの関連も深い。この流れを逆回転させなければならない。