<社説>嘉手納爆音増 「負担軽減」言う資格ない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍嘉手納基地周辺の騒音が悪化している。住民生活をかき乱す騒音の抑制に手をこまねいている日米両政府に「基地負担軽減」の文言を用いる資格があるのか。

 嘉手納基地周辺の3地点の調査で、2015年度の70デシベル以上の騒音発生回数が14年度より2757回(6・1%)増え、4万7685回に上ることが、嘉手納町の測定調査で分かった。
 住民からの苦情件数は前年度比92件も増えて302件に達し、過去最多となった。どれだけ声を上げても我慢の限度を超える騒音が減る兆しがない。苦情が急増するのは当然のことだ。
 「負担軽減」は実態が伴わない空手形そのものと化した。具体的なデータがそれを裏付けている。
 米軍の極東における最大拠点である嘉手納基地は地元自治体と住民の反発をよそに、事実上、米軍の自由裁量が許され、24時間運用されている。約100機の常駐機に加え、頻繁に飛来する外来機が騒音回数を押し上げている。
 嘉手納基地を抱える3自治体の再三の抗議や議会決議がなされても、外来機飛来が常態化している。
 民意が反映されない基地運用が続き、周辺住民の過重負担が一層強まる異常事態を放置することは許されない。
 嘉手納基地をめぐる1次、2次の爆音訴訟で、騒音が受忍限度を超える違法状態にあると認定された。それでも改まらない基地重圧に業を煮やし、第3次訴訟は2万2千人を超える原告が結集し、嘉手納町民のほぼ3人に1人が名を連ねている。違法状態にある騒音の増加に歯止めをかけられない日本政府の責任は極めて重い。
 10年5月、日米両政府は県外の自衛隊基地などへの訓練移転拡充によって騒音を軽減することで合意した。11年1月にはF15戦闘機の訓練のグアムへの一部移転も追加された。ところが、訓練移転の成果は乏しく、米本国などからの戦闘機飛来が相次いでいる。
 15年度に米国の州軍の戦闘機が4度も暫定配備されたことは記憶に新しい。さらに米軍は最も騒音が激しいF35戦闘機の訓練運用を計画している。
 沖縄は軍事植民地ではない。深刻化する爆音禍は、普天間飛行場の5年以内閉鎖と同様に、安倍政権が米側にまともに働き掛けていない証左ではないか。今すぐにでも米側に強く是正を促し、目に見える形で騒音を軽減すべきだ。