<社説>G7外相「広島宣言」 「核の傘」畳む出発点に


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 原爆を投下した米国や核保有国の英国、フランスを含む先進7カ国(G7)外相会議が被爆地広島で開かれ、「広島宣言」を発表した。各国指導者の被爆地訪問を呼び掛けたほか、核兵器が二度と使われてはならないとの被爆地の「心からの強い願い」を共有したと明記したことを評価したい。

 だが、核兵器廃絶に向けた強い決意を読み取ることはできない。「核兵器の非人道性」が盛り込まれなかったことが大きい。核保有国が核兵器禁止につながりかねないと反対したため、表現を弱めた「非人間的な苦難」との文言になった。
 被爆地の願いを共有し、核兵器を二度と使わない決意があれば、核兵器使用が国際法上の「人道に対する罪」に当たる可能性などを懸念する必要はなかろう。核兵器の非人道性が強調されれば、停滞する核軍縮へ向けた国際的機運が高まることも予想された。その機会を逃したと言わざるを得ない。
 日本は唯一の被爆国としての役割を全うしたとは言い難い。文言で核保有国に配慮したことがそれを証明する。日本が米国の「核の傘」に依存する以上、発言力には限界があるということだ。
 ケリー米国務長官は原爆資料館について「核兵器の脅威をなくすことが私たちの義務だということだけでなく、戦争そのものを避けるためにあらゆる努力を払う必要があることを明白かつ厳しく、切実に思い起こさせる」と記帳した。
 核軍縮に積極的な姿勢を示したと読めるが、核兵器廃絶には踏み込んでいない。「核兵器の脅威」をなくすことが義務だとしたにすぎない。
 オバマ氏は2009年4月、チェコの首都プラハでの演説で「核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」「核兵器を使用した唯一の核保有国として行動する道義的責任がある」と表明した。
 オバマ氏の被爆地訪問で核兵器廃絶を推し進めたい。オバマ氏が自身の言葉に責任を持つならば、広島、長崎を訪れてほしい。来年1月で任期は切れるが、世界に影響力のある米国の指導者が被爆地を訪れる意義は大きい。
 ともあれ、G7外相がそろって平和記念公園を訪れ、原爆資料館を見学し、被爆の悲惨さに触れたことには大きな意味がある。広島訪問、そして広島宣言を「核の傘」を畳む出発点にしたい。