<社説>田母神元空幕長逮捕 不明金の使途を自ら明かせ


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 2014年2月の東京都知事選後に運動員に報酬を支払ったとして、東京地検特捜部が元航空幕僚長の田母神俊雄容疑者と当時の選対本部事務局長を公選法違反(運動員買収)の疑いで逮捕した。

 田母神容疑者は疑惑発覚後、陣営幹部が運動員に報酬を渡していたことを認めた上で「当時は違法だという認識がなかった」と釈明していた。信じ難い。選挙運動のルールさえ知らずに立候補したというのか。そもそも「認識がなかった」からといって許されるものでもない。
 この間、田母神容疑者は報酬の支払いについて「直接指示したことではない」とし、身の潔白を主張している。捜査当局は不透明な金の流れなど、事件の全容解明に全力を挙げてもらいたい。
 田母神容疑者は公選法違反に当たることを知ったとした後も、重く受け止めて反省する姿勢は見られなかった。
 今月1日には自身のツイッターで「逮捕されるほどの大罪を犯したという認識もない」と書き込んだ。逮捕当日には「逮捕されるようです。権力にはかなわない」「何とも理不尽さを感じます」と書いている。罪の意識のなさにはあきれるほかない。
 公選法は選挙運動員への報酬支払いを原則として禁じている。支払った側だけでなく、報酬を受け取った側も刑事責任を問われるのである。田母神容疑者は「一生懸命頑張ってくれたからしょうがないかという気持ちだった」とも述べていた。「しょうがない」で済む問題ではない。
 田母神容疑者には国民として身に付けておくべき順法精神が決定的に欠けているのではないか。有罪かどうかは別にして、田母神容疑者に政治家としての資質があるのか疑わしいと言わざるを得ない。
 資金管理団体「田母神としおの会」など2団体の14年政治資金収支報告書には計5541万円の使途不明金が計上されている。一方、田母神容疑者らの逮捕容疑で浮かび上がった選挙運動員への報酬支払額は計480万円でしかない。大部分の解明はこれからである。
 田母神容疑者は都知事選で落選したとはいえ、約61万票を獲得している。票を投じた有権者への責任を果たすためにも、田母神容疑者自身の口から、私的流用があったのかも含めて、全ての資金の使途を明らかにすべきだ。