<社説>災害対応 避難・支援計画を見直そう


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 熊本地震の被災地では多数の人が避難しているが、道路寸断などで物資不足が深刻化している。飲み水さえ足りず、指定避難所の校庭にパイプ椅子で「SOS」の文字ができる光景は衝撃的だ。一刻も早く物資が行き渡るよう、政府は最大限の支援態勢を敷くべきだ。

 一方、熊本県庁は支援物資を含む段ボールで満杯で、さばき切れない状態という。自治体の人手不足も深刻なのだ。民間から支援の輪を広げたい。
 こうした時は往々にしてボランティアの受け入れそのものにも手間取る。各ボランティアを調整する総合的な調整機能が重要だ。行政はそうした役目を担える民間団体との連携も急いでほしい。
 それにしても、過去から私たちは教訓を得てきたはずだ。それなのにこれほど脆弱(ぜいじゃく)なのはなぜか。
 阪神大震災以後、各県から緊急消防援助隊を派遣する仕組みができ、今回も約2千人が来援した。だが震度6以上が次々起きる今回のような事態は想定外だった。部隊をいつまで待機させるか、難しい対応を余儀なくされている。
 自治体間の相互応援協定の動きも阪神大震災以降に広がった。結果、地域を越えて迅速に物資を運ぶ態勢は整いつつある。だが、体育館に物資が山積みになる一方、個々の避難所の被災者にはなかなか届けられないという問題は、その後も頻発している。
 被災地に送ると作業が滞るのはいわば必然だ。手前の地域にいったん物資を集積させ、各避難所向けに小分けにする方が効率的だ。2007年の新潟県中越沖地震で得た教訓だが、生かされたのか。
 東日本大震災では、仕分け拠点から避難所までの配送に民間の宅配業者が活躍した。防災学者は「国や県、自衛隊は大量に物資を送るのは得意だが、避難者個々の要望に合わせるのは苦手だ。もっと民間に任せる発想を」と語る。
 避難所で被災者一人一人の要望に合わせて対応するのはボランティアの得意技だ。余震が続く状況とはいえ、やはり民間の力を得たい。それを円滑に引き出す仕組みが必要だ。
 東日本大震災後、自力避難困難者名簿の作成が義務付けられたが、作成済み自治体は12%にとどまる。今回も行方不明者の把握に手間取った。その点も留意が必要だ。
 今回浮き彫りになったこれらの課題に向き合いたい。現在の避難・支援計画を総合的に見直そう。