<社説>ブラックバイト 調査と指導で根絶しよう


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 深夜勤務を強いられ、講義を休む。その結果、成績不振に陥り、除籍の危機に直面する。日本の将来を担う学生をそんな状況に追い込む社会は、健全とは言えない。

 琉球大学法文学部の野入直美准教授が実施したアルバイトに関する調査で、ブラックバイト被害にさらされる学生の姿と、学業とバイトの両立を阻む事業所の存在が浮かび上がった。
 かつてはバイト学生に対して、学業を応援する雰囲気がバイト先にはあった。それが希薄になってはいないか。事業を成り立たせるための単なる歯車として学生を扱う雇用主に事業を興す資格はない。学生か否かにかかわらず、労働者の保護は経営者の責務であることを認識すべきである。
 調査は野入准教授の講義を受講する学生61人を対象に実施し、バイト経験のある学生46人が回答した。調査規模は小さいが、県内学生の窮状とブラックバイトの顕在化を知る指標といえよう。
 不当な扱いを受けたとする学生は8割に上った。そのうち「希望しないシフトに入れられた」が13%で最も多かった。学生にとって本分は学業である。学生が講義やリポートをまとめる以外の時間帯にバイトを希望することは当然である。
 採用する側は、学生の希望を採用段階で認識しているはずである。それを尊重することは雇用主としての最低限の務めである。午後9時から午前6時までの勤務など「希望しないシフト」を押し付けることは許されない。
 残業代が支払われないケースもあったが言語道断だ。時給を知らされずに2カ月勤務を続け、賃金未払いに遭った事例は明らかに違法である。
 奨学金と仕送りでは足りず、親の負担も減らしたいと始めたバイトがブラックバイトではあまりに酷だ。学業を続けるためのバイトが、逆に学生を追い込む。このような状況を放置してはならない。
 今回の調査で浮き彫りになったブラックバイト被害は氷山の一角であろう。他大学や専門学校などでも全学を対象に調査を実施し、被害実態を明らかにするよう求めたい。
 学生の学業とバイトの両立を保障するため、行政は悪徳雇用主を徹底的に指導し、改善しない事業所については公表することも必要だろう。全県調査と指導でブラックバイトを根絶したい。