<社説>三菱自動車不正 企業体質改め真の再生を


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 三菱自動車が燃費試験で不正行為を働いていた。2000年代に発覚した一連のリコール(無料の回収・修理)隠し問題を契機に、三菱自は過去の企業風土との決別を宣言したはずではなかったのか。

 燃費向上競争が激化する中、三菱自は自社目標をクリアできず13年以降、軽自動車4車種の燃費試験で意図的に本来よりも燃費を5~10%程度良く見せていた。
 コンプライアンス(法令順守)の欠如も甚だしい。やるべきことは不正ではなく、目標を達成できなかったことを報告することだ。それが言えない雰囲気が社内にあったのではないか。
 2車種の供給を受ける日産自動車からの指摘をきっかけに不正が発覚したことは、自浄作用がなかったことの証しと言えよう。
 理解できないのは社長への報告が不正発覚から約5カ月後だったことだ。経営トップに法令違反があったことを即座に伝え、解決を図ることは企業としての常識であり、責務である。
 計62万5千台で不正があったが、それだけで収まりそうにない。4車種以外でも02年以降、国内法で定められた方法と異なる試験方法でデータを集めていたという。不正行為台数はさらに広がる可能性がある。
 不正を見抜けなかった国土交通省にも責任の一端はある。検査・認証体制を早急に見直すべきだ。
 三菱自は顧客からの不具合情報を隠し、ひそかに修理するヤミ改修を約30年にわたり続けていたことが00年に発覚した。だがその後もリコールは一部にとどまり、死傷事故が発生した。整備不良が原因とし、部品の欠陥を長年隠蔽(いんぺい)していたことで、世論の強い批判を浴び、経営危機にも陥った。
 その反省は生かされていないと断じざるを得ない。
 三菱自は想定される燃料代と実際にかかった差額分の補償を検討するというが、それで済む話ではない。企業としての責任を明確にする必要がある。
 度重なる不正がありながらも三菱ブランドを信頼し購入した顧客、そして性能に自信を持って顧客に勧めた販売会社への重大な背信行為であることを、社全体で認識し、反省する必要がある。
 三菱自は企業体質を今度こそ改め、真の再生を果たしてほしい。それができなければ、企業として存続する価値はないと深く認識すべきだ。