<社説>震災関連死 救える命を救いたい


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 あの大地震をくぐり抜けてきた命だ。それがみすみす失われるのは、いたたまれない。

 熊本地震で、車中泊やストレスが原因とみられる震災関連死が相次いでいる。震源は広がり、地震は今や「群発」の様相すら呈している。避難生活が長引くのは確実で、関連死が続かないか心配だ。
 救えるはずの命だ。何としても救いたい。窮屈な避難所や車中泊はもう限界という方も多いだろう。仮設住宅建設を急ぎ、併せて「みなし仮設」も早急に確保すべきだ。被災県での確保は難しい面もあるはずで、より広域での「みなし仮設」確保を検討していい。
 倒壊家屋は1万を超え、避難所には今も10万人以上が暮らす。それ以外に車中泊が多数いるとみられ、益城町だけで約1万人と推計されている。
 余震どころか震度7がいつまた起きないか分からない中、安心して家にいられないのは当然だ。周りへの気兼ねから避難所での寝泊まりを避ける気持ちも理解できる。
 だが車中泊は血栓が血管をふさぐエコノミークラス症候群が懸念される。人がひしめき合う避難所で、狭い中、窮屈な暮らしを続けることにも同様の懸念があろう。
 冷たくて硬い床に毛布を敷いただけの避難所もある。常に人の気配や物音が絶えない環境は、安眠とは程遠いはずだ。衛生状態も懸念される。そんな暮らしが長引くことのストレスはさぞやと思われる。一刻も早く、安心して眠れる環境をつくってあげたい。
 九州各県は被災者受け入れを表明し、福岡・佐賀・長崎・宮崎・鹿児島の5県で2300戸以上の公営住宅を確保した。
 沖縄県も県内の公営住宅を無償提供することを決め、県営、市営合わせて90戸を確保した。むろん賛成だ。県民挙げて支援したい。
 東日本大震災の際は県と加盟企業で協力会議を設置、「ニライカナイカード」を避難者に配布し、カードを提示すれば加盟企業の各種割引が受けられる仕組みをつくった。同様の支援を考えていいのではないか。
 これ以上の関連死は何としても防ぎたい。慣れ親しんだ地域から離れるのは不安があって当然だ。仕事の都合もあろう。だが、大地震を生き延びた貴重な命を大切にしてほしい。政府も早急に激甚災害に指定し、仮設住宅整備を強く後押しすべきだ。