<社説>女性登用目標 均等法30年の反省を


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 今年は女性にとって節目となる年である。女性が参政権を行使して70年、採用や昇進の女性差別解消を目指した男女雇用機会均等法の施行から30年だ。今年4月には企業や自治体に女性登用の数値目標設定を義務付ける「女性活躍推進法」も全面施行された。法整備を経て、政治の世界でも企業活動でも女性が存分に能力を発揮しているか、といえば、首をかしげざるを得ない。

 安倍晋三首相肝いりの政策である「女性活躍」は後退している。
 政府は当初、2020年までに「各分野で指導的地位を占める女性の割合を少なくとも30%程度」にするとの目標を掲げた。具体的には管理職となる課長級以上を3割にするということで、「2030(ニイマルサンマル)」をキャッチフレーズにアピールした。
 しかし、本年度からの第4次男女共同参画基本計画では20年の企業の課長職以上の割合を15%と設定するなど、各分野の女性登用目標は30%を大きく下回り、達成を早々と断念した。公務員でも中央省庁が7%、都道府県15%、市町村20%と大きく切り下げた。
 米ハーバード大のロザベス・M・カンター教授の「黄金の3割」理論によると、構成人員の30%を少数派が占めると、組織の意思決定に影響力を持つようになるという。それに基づけば、女性が組織の意思決定に影響力を出せるのはまだまだ先、ということになる。
 政府は「現実的な目標設定に変えた」と言う。だが「2030」のお題目を降ろすなら、これまでの支援策や取り組みなど均等法30年を検証し、反省しなければならない。
 厚生労働省の調査によると、日本の課長級以上に占める女性の割合は7・5%と1割にも満たない。そもそも現在でも総合職に採用される女性は11・6%しかいない。数少ない採用の中から、長時間労働など男性中心型の労働慣行に適応した女性だけが管理職に登用されるという日本社会の仕組みが見えてくる。
 「役職に就ける人材がいない」「女性側が管理職に就くのを嫌がる」などの声は、女性を平等に採用せず、人材として育ててこなかった側面もあろう。
 女性活用を旗印にしながら、計画だけ作って後は企業任せではまたお題目に終わる。「黄金の3割」は永遠にこない。