<社説>衆院補選 接戦に政権批判が表れた


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 安倍政権と政権与党に対する国民の厳しい視線が顕在化しつつある。

 今夏の参院選の前哨戦とされた衆院北海道5区補欠選挙は、公明などの推薦を受けた自民新人の和田義明氏が初当選を果たした。
 民進、共産など野党4党の統一候補である無所属新人の池田真紀氏は及ばなかった。一方、与党が候補者を立てなかった京都3区では民進党の泉健太氏が当選した。
 焦点だった北海道5区で敗れたものの、無名の池田氏が約1万2千票差まで迫ったことで、野党共闘が政権批判の受け皿となり得る可能性は示せたと言えよう。
 補選は町村信孝前衆院議長の死去を受け、実施された。町村氏の娘婿である和田氏が「弔い合戦」を掲げ、分厚い支持基盤を引き継いで圧倒的有利とみられていたが、競り合いに持ち込まれた。
 情勢の厳しさが伝わり、自公両党の幹部が連日、選挙区入りし、支持基盤を引き締める組織選挙を徹底したことが奏功した。
 与野党激突型の選挙に勝利したことで、安倍政権に一定の評価が示された形だが、自民党内には「本来なら圧勝しないといけなかった」(幹部)との見方もある。
 「自民1強」「安倍1強」といわれる政治状況下で、議員の不祥事や失言が相次いでいる。巨大与党内の緩み、安全保障関連法の強行成立などに対する国民の批判を軽視せず、安倍晋三首相は謙虚な姿勢で政権運営に当たるべきだ。
 競り合いの要因には、安保法制に対する有権者の懸念や不安もあろう。自衛隊基地と自衛官を多く抱え、町村氏の金城湯池(きんじょうとうち)とも称された千歳市では投票率が低迷した。
 アベノミクスが地方に十分な波及効果を生んでいるかも争点だった。経済振興をアピールした和田氏だが、その恩恵が北海道に届いていないという批判もあった。
 選挙戦では民進、共産の両党間で運動への取り組み方が異なるなど、野党共闘の課題も浮かんだ。与党側は「政策抜きの野合」「選挙目当て」などの批判を強めている。野党側は共闘の目標や理念を明確にし、参院選の32ある1人区で共闘を広げ、対立軸を一層明確にしてほしい。
 北海道5区の結果は、安倍首相が衆参同日選に打って出るか否かの判断材料ともされたが、熊本地震の復興を急がねばならない中、同日選の強行は無理がある。