<社説>事実誤認教科書 訂正なければ不使用運動を

 人間が成長する過程で、学校教育の果たす役割は大きい。その認識が教科書会社、教科用図書検定審議会、文部科学省にはあるのだろうか。

 2017年度から主に高校1年生の一部で使用が予想される帝国書院の教科書「新現代社会」の沖縄に関するコラムの記述で、事実誤認が明らかになって1カ月以上たつ。だがいまだに全面解決には至っていない。
 一部は訂正されたが、「アメリカ軍施設が沖縄県に集中していること」を挙げて「毎年3千億円の振興資金を沖縄県に支出し、公共事業などを実施している」と記載している。米軍基地を負担させる代償として、政府が予算で沖縄を厚遇しているとの誤解を与える記述であり、看過できない。
 「9・29県民大会決議を実現させる会」などの要請に対し、帝国書院は再度訂正申請を行うかについて答えていない。文科省も問題解決に動く気配はない。
 堂故(どうこ)茂文科大臣政務官は衆院沖縄北方特別委員会で「何をどのように記述するかは欠陥のない範囲で発行者の判断に委ねられている」「沖縄の基地問題の記述についても検定審がしっかり審議して合格したものだ」と述べている。
 記述の欠陥は明らかだ。帝国書院が訂正申請したことが何よりの証拠である。「しっかり審議」したならば、欠陥を見逃すことはなかろう。欠陥を合格にしたことを重く受け止めない答弁はいかがなものか。政務官答弁ではっきりしたことは、検定審と文科省の機能不全と責任感の欠如である。
 コラム執筆者の姿勢も理解に苦しむ。事実誤認の指摘があっても、自らの考えなどを詳細に説明していない。コラムとはいえ、教科書執筆者の一人として責任ある立場だということを認識しているのだろうか。
 学校教育で事実に基づかない教科書を使わせることを放置することは許されない。だがこのままでは帝国書院の「新現代社会」を使う高校生だけが、沖縄に対する正しい知識を学ぶ機会を奪われることになる。
 教科書を長年発行し、学校教育に貢献してきたとの自負と責任感が帝国書院にあるなら、誤解を与えない記述に改めて再度訂正申請すべきだ。訂正申請しないならば、沖縄としては全国の教育委員会に帝国書院の「新現代社会」を使用しないよう呼び掛けるしかない。



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