<社説>熊本・本震2週間 災害弱者の支援充実を


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 16日未明、熊本県で阪神大震災と同規模のマグニチュード7・3の本震が発生してから2週間が経過した。震源域は大分県にも拡大し、29日は由布市で震度5強を記録した。

 熊本、大分両県で震度1以上の地震が千回に達した。激しい地震活動はなお続くとみられ、気象庁は引き続き警戒を求めている。熊本県内の避難所には依然3万人以上が身を寄せている。長期避難によって健康が悪化しないよう心と体両面の健康管理と支援が必要だ。
 特に、高齢者や体の不自由な人、妊婦などを受け入れる「福祉避難所」が十分機能していない。熊本市は176施設と協定を結んでいるが、27日までに41施設207人にとどまっている。計画の4分の1程度でしかない。
 福祉避難所は阪神大震災を機に必要性が指摘され、2007年の能登半島地震で初めて設置された。今回は建物が被害を受け、食料や水などの物資や、自治体や介護施設の職員が被災するなど予想外の出来事が重なり、計画通りに進んでいない。介護の人材不足も対応遅れにつながっている。
 災害弱者が一刻も早く支援を受けられるように対応を急ぎたい。紙おむつや介護食などの物資の支援に加え、沖縄を含む他府県から熊本へ福祉ボランティアや専門職員を派遣することで、現地の介護を下支えできるのではないか。
 熊本県は29日、震災関連死の疑いが計17人になったと明らかにした。「車中泊」が原因とみられるエコノミークラス症候群による死者も出た。医師や保健師らのチームによるきめ細かな健康管理が必要だ。
 一方、余震が沈静化すると人や物の流れの復旧や社会基盤の整備、被災者の日常生活の再建、甚大な被害を受けた地域の再建、経済の立て直しなどに取り掛からなければならない。
 倒壊の恐れから「危険」と判定された建物は熊本県内で1万棟を超え、阪神大震災の6476棟を上回った。仮設住宅100戸の建設が始まり、今後は土砂災害への応急対策、道路の修復など膨大な復興作業が続く。地元の力だけでは限界がある。
 政府をはじめ全国の自治体、民間の力が必要だ。全国知事会を通じて他自治体の支援を本格化させるなど、力を合わせて復旧復興を着実に進めたい。