<社説>辺野古浮具撤去 臨時制限区域の撤廃急げ

 豊かな海をつぶして新たな基地を築く愚行を阻むことに向け、一歩前進という評価はできよう。

 だが、安倍政権の姿勢は対立する側に歩み寄ったように見せ掛ける詐術のようだ。尊大さを取り繕う底意が県民に見透かされている。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を伴う新基地建設問題で、沖縄防衛局は立ち入り制限区域を示す浮具(フロート)や油防止膜(オイルフェンス)の撤去を開始した。
 前知事による埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事の権限を剥奪する挙に出た代執行訴訟で、裁判所から安倍政権は強権ぶりを疑問視され、和解に追い込まれた。
 和解条項は「埋め立て工事を直ちに中止する」と明記されていた。知事の埋め立て取り消しの効力が生じ、安倍政権は浮具などを設ける権限を喪失している。
 浮具撤去は至極当然の措置であり、3月4日の和解成立から2カ月近くたっての作業は遅過ぎる。
 和解条項に反する状態を継続させた揚げ句、6月の県議選や夏の参院選に向け、対立する沖縄側の理解を得る姿勢を演出する政治的パフォーマンスでもあるだろう。
 そもそも安倍政権の和解に対する解釈は独り善がりが過ぎる。臨時制限区域の撤廃や浮具撤去などの義務はないと主張している。
 和解条項の「直ちに中止」を普通に解釈すれば、工事を安定的に推進するために設けられた「臨時制限区域」も必要性がなくなる。工事中断の間は制限区域を維持する権限もないと解釈するのが筋であり、その撤廃を急ぐべきだ。
 大浦湾に居座る大型の作業台船も撤収し、浮具を固定するために海底に投じた大型ブロックも引き揚げられねばならない。
 新基地を拒む沖縄の民意を無視して建設を推進する安倍政権は2014年7月に臨時制限区域を沖合2キロまで拡大した。立ち入り禁止を示す浮具や浮標が取り囲んだ総面積は561ヘクタールに上っている。
 翌8月から約20隻に及ぶ警戒船が動き回り、騒音をまき散らしながら、市民への苛烈な警備が続いた。そして、何が起きたのか。特別天然記念物ジュゴンやウミガメがこの海域に寄り付かなくなった。
 豊かな海に悪影響を与えていることが、当の沖縄防衛局の調査で立証されているのである。臨時制限区域の早急な撤廃、豊かな海への原状回復を強く求めたい。



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