<社説>北朝鮮党大会 核放棄し孤立脱却せよ


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 核をはじめとする軍備増強で譲歩を引き出す、あるいは自国の主張を認めさせるという手法が時代遅れであることは論をまたない。

 北朝鮮の金正恩第1書記は6日から始まった朝鮮労働党大会で核保有国としての立場を改めて宣言し、核武装の強化を表明した。
 その上で在韓米軍の撤退や、日本には植民地支配への謝罪を求め、韓国とは根本的に関係を改善したい意向を示した。金第1書記の主張は根底の部分で誤っている。核開発に伴う経済制裁で孤立する北朝鮮が、諸外国との関係を改善したいのであれば、その前提は核開発の放棄だ。核の脅威をちらつかせる瀬戸際外交の時代は終わっている。
 36年ぶりに開かれた党大会は、党の最高指導機関に当たる。権力を継承して5年目となる金第1書記の基盤確立を内外にアピールする狙いがあるとみられる。
 確かに金第1書記の報告や演説は、核・ミサイル開発の成果を自ら「大成功」と強調する内容で、核開発と経済再建を同時に進める「並進路線」の堅持など金第1書記のカラーが前面に出ている。
 注目されるのは金第1書記が「敵対勢力が核で自主権を侵害しない限り、先に核兵器は使用しない」「世界の非核化を実現するために努力する」と述べたことだ。
 核の先制不使用という発言が国際社会に何ら響かないことを、まず金第1書記に知らしめる必要がある。その意味で核拡散防止義務を守ると言明したことは、多国間協議に北朝鮮を導くための一条の光ともいえる。
 北朝鮮は1993年に核拡散防止条約(NPT)からの脱退を示唆した。2003年には改めてNPT脱退、国際原子力機関(IAEA)の核査察義務からも離脱すると宣言した。金正日時代の08年を最後に核問題を巡る6カ国協議は開かれておらず、この間、核やミサイル実験による挑発と国際社会の制裁が繰り返されてきた。
 自ら核不拡散に努力するというなら、まず6カ国協議のテーブルに着くべきだ。さらにはNPTの順守、IAEAの査察も受け入れるべきだろう。それこそが指導者の責任だ。
 党大会は北朝鮮が「成果」を誇る一方、最大の後ろ盾である中国が代表団出席を明言せず、孤立化を印象づけた。国際社会が北朝鮮を受け入れるには、核放棄しかないことを金第1書記は知るべきだ。