<社説>民生委員不足 「奉仕の精神」広げたい


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 地域住民が安心して暮らせるよう活動する民生委員・児童委員が不足している。県によると、4月1日現在で2108人が委嘱されているが、定数2368人に対する充足率は89・0%しかない。昨年に続き全国最下位となっている。

 充足率の低さは、必ずしも地域福祉の低下を意味するものではない。だが不足している分、民生委員一人一人の負担が重くなることは容易に想像がつく。支援を求める人たちへの対応が遅れることも懸念される。充足率アップは急務と言えよう。
 県は充足率が低い要因を「民生委員の役割が周知されていないのではないか」と分析している。昨年も同じような分析だった。要因が分かっていながら、改善が進まないのはなぜか。詳細な分析と対策を急ぎたい。
 民生委員委嘱の第一段階は自治会長らの推薦などである。地域の実情に精通し、福祉活動やボランティア活動へ深い理解を持った住民の掘り起こしに、自治会は積極的に取り組んでほしい。
 子どもの貧困問題では多くの県民が高い関心を示して募金に応じたり、支援にも乗り出したりしている。地域福祉を向上させる人材は確実にいる。その人たちへの働き掛けも考えたい。
 少子化と核家族化で地域のつながりや人間関係が希薄になっている。このため、周囲に相談できずに孤立する生活困窮世帯は増えている。民生委員は支援制度を知らずに苦しむ困窮世帯に制度利用を働き掛けて行政・福祉機関とつなぐ。
 それ以外にも高齢者や障がい者、子育ての不安に関する身近な相談相手となり、ニーズに応じた福祉サービスの情報を提供している。民生委員が果たす役割は極めて大きい。
 「民生委員・児童委員の日」の12日から「活動強化週間」が始まった。これを契機に、民生委員の活動への理解を県民全体で深めたい。充足率100%を目指して「社会奉仕の精神」をさらに広げ、誰もが安心して暮らせる地域社会を実現したい。
 民生委員の身分は厚生労働相から委嘱された非常勤の地方公務員で、給与は支給されない完全なボランティアである。奉仕の心を持った県内2108人の民生委員一人一人の福祉活動への熱意を高く評価し、日頃の献身的な活動に感謝したい。