<社説>熊本地震1カ月 「被災前以上」を今度こそ


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 震度7が2回も起きた熊本地震はきょうで発生から1カ月となる。今も多くの人が避難生活や車中泊を余儀なくされている。全半壊した建物は7万棟を超えた。わが家が倒壊した姿を見る無念はいかばかりか。被災者の苦しみ、悲しみは察するに余りある。

 熊本県が設置した「くまもと復旧・復興有識者会議」(座長・五百旗頭(いおきべ)真熊本県立大理事長)がまとめた緊急提言は、災害前より良い状態をつくる「創造的復興」を提唱した。
 東日本大震災でも唱えられた理念だが、東北の現状はそれと懸け離れている。残念でならない。あらゆる政策を総動員し、善意の支援もかき集めて、今度こそ本当の「復興」を実現させたい。
 避難所の現状は改善しつつある。硬い床に伏せていたのが段ボール製の簡易ベッドになった。しかし、改善といってもその程度なのだ。梅雨を控え、温度も上がって人いきれで蒸し、プライバシーもない。感染症や食中毒を心配しなければならず、エコノミークラス症候群などによる震災関連死とも背中合わせだ。こんな状態は一刻も早く解消しなければならない。
 仮設住宅建設は地震2週間後に始まったが、東日本大震災などに比べ1週間遅れた。「次の大地震」に備えながらの着手だったからだ。余儀ない事情だったとはいえ、被災者を思えば猶予はならない。仮設の完成を待つだけでなく、すぐに入居できる「みなし仮設」の大幅な導入を急ぐべきだ。
 民間アパートの借り上げだけでなく、空き家の提供も検討したい。全国には約820万戸の空き家があるとして、国交省は公営住宅として活用する方針を示しているのだから、この機会に導入していい。
 政府は国の補助率をかさ上げする激甚災害に指定したが、支援対象は社会基盤の公共事業が中心だ。被災自治体にはやるべきことが山ほどあるはずだ。国が地方の事業を肩代わりできる非常災害にも指定されたが、それで足りるとは到底思えない。
 熊本県の蒲島郁夫知事は、県や市町村の財政負担が実質ゼロとなるような特別立法を求めている。今こそ政治の出番だ。迅速に対処し、政治というものが信頼できることを国民に見せてほしい。
 社会資本の復旧だけでなく、被災者の生活再建こそが急がれる。そのためのあらゆる対策を、政治・行政には講じてもらいたい。