<社説>基地土壌汚染 沖縄の安全は二の次か


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 キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の跡地の土壌から最大で基準値の21倍を超える鉛が検出されていた。基準値以上のヒ素も見つかり、発がん性が指摘されるジクロロメタンすらあった。

 基地の跡地に土壌汚染が見つかるのは、もはや定例行事だ。隠されているのが当たり前、汚染がなかったら奇跡と言っていいほどである。
 返還地を政府が徹底的に調べ、汚染を完全に除去すべきなのは言うまでもない。問題は、返還後になって見つかるという例が繰り返されることにある。
 米軍は、米本国の基地では、物質の使用履歴や汚染の有無、地点などを厳密に記録する。その使用履歴がない場合、退役軍人の聞き取り調査まで実施して補完する。
 だが沖縄では「土地の使用履歴がない」と言い放つだけだ。紛れもない二重基準である。米本国の人の安全は守るが、沖縄の安全は二の次で、どうでもいいということか。そう問われて答えられまい。
 日本政府もその現状に一言も異議を挟まない。先日取り交わした環境補足協定でも、土地使用履歴の提出義務化どころか、履歴の履の字も書き込めなかった。
 わずかに、自治体の基地内立ち入り調査に米側が「妥当な考慮を払う」と記入しただけで、日本政府は「歴史的意義を有する」(菅義偉官房長官)と大騒ぎした。「考慮」を払った結果、立ち入りを拒否してもおとがめなしだ。そもそも相手の要請に「妥当な考慮を払う」のは常識である。これで「歴史的」とはまさに噴飯物だ。
 ドイツの米軍基地では、ドイツの自治体は予告なしで立ち入りできる。日本では米軍基地内は治外法権だが、ドイツではドイツ国内法順守の義務がある。環境汚染もドイツでは米国が浄化の義務を負う。韓国でも汚染があれば自治体は米軍と共同調査を実施できる。
 米本国並みどころか、他国並みの対策さえ日本では何一つ実行できない。日米地位協定で「排他的管理権」を米軍に認め、事実上の治外法権をつくり出しているからだ。
 翁長雄志知事は安倍晋三首相との面談で「日米地位協定の下では日本国の独立は神話だ」と述べた。その実例の、これも一つである。
 政府は直ちに地位協定の抜本的改定を求めるべきだ。米国も、本国と同様の対策を実施しなければ差別主義者と呼ばれても仕方ない。