<社説>伊勢志摩サミット 租税回避許さぬ実効策を


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 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)がきょう三重県伊勢、志摩両市で開幕する。世界経済の持続的成長のため、財政出動で各国の足並みがそろうかが焦点とされる。

 だがもっと構造的かつ本質的な課題がある。租税回避地(タックスヘイブン)を使った税逃れだ。その根絶に世界が乗り出すか、各国当局の情報交換拡充程度でお茶を濁すか。それこそが真の焦点であろう。
 パナマ文書が暴いた税逃れの闇の深さに世界は震撼(しんかん)した。日本1国だけを取っても、回避地の一つ・ケイマン諸島だけで、昨年末時点の証券投資残高は74兆円に上る。過去11年で約3倍の急増ぶりだ。
 法人対象の税率は国と地方合計で、課税軽減の特例を除けば3分の1程度である。個人の高額所得だともっと高い。そう考えれば、本来あった20兆円を超す税収が回避地に逃げたとも見える。これだけの予算があれば、保育施設不足などとっくに解消していただろう。
 各国も同様の事情のはずだ。世界の金融資産の8%が租税回避地にあり、その額は5兆8千億ユーロ(約710兆円)とする研究もある。国境をまたぐ税逃れこそ、一国では解決できない難題を討議するサミットにふさわしい。
 3年前のサミットでも問題は話し合われた。だが形ばかりの対策で実効性は乏しかった。理由は今年判明した。討議を仕切ったキャメロン英首相自身、租税回避地と深い関わりがあったことが、パナマ文書で明らかになったからだ。
 過去40年で租税回避が急増したのはサッチャー元英首相の新自由主義的金融改革に由来する。取引の規制を取り払ったことで、それを扱う英シティに資金が流入した。
 米国も、例えばデラウェア州は世界有数の租税回避地と称される。米英両国の経済、金融資本自体が租税回避地の仕組みから多大な恩恵を受けているのである。それこそが租税回避膨張の要因ではないか。その構造にメスを入れる討議が必要だ。
 各国の税収不足を招いたことだけが問題でもない。匿名性の高さこそ深刻だ。犯罪収益隠し、テロの資金にもなりかねないのである。例えばカダフィ政権時代のリビアの核開発関連機器の代金支払いは回避地経由と報道された。
 だとすれば、喫緊の国際的課題であるのは明らかだろう。租税回避を許さない実効ある対策に、今度こそ主要国は踏み込むべきだ。