<社説>改正児童虐待防止法 悲劇止める策にしたい


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 増え続ける児童虐待に対応する改正児童福祉法と改正児童虐待防止法が27日の参院本会議で、全会一致で可決、成立した。繰り返されてきた悲劇を止める策となることを期待したい。

 経験豊かなベテランの児童福祉司や専門知識を持つ弁護士の児童相談所への配置を義務付け、家庭に強制的に立ち入る「臨検」手続きの簡略化などが盛り込まれた。
 「もっと早く児相が『臨検』し、保護しておれば」と思われるケースは後を絶たない。
 昨年7月、宮古島市で3歳女児が母親の再婚相手から虐待され、死亡した。この事件では母親や子どもへの暴力が確認されており、事件の前には児相が職権による一時保護を決めていた。しかし、ドメスティック・バイオレンス(DV)を受けていた母親が一時保護を再三拒否したことや、家族の転居などで一時保護は数回にわたり見送られた。
 検証した有識者による報告書は「保護を強行して保護者と敵対関係になることの懸念や、転居などにより環境が変化した際に虐待のリスクが軽減したかのような誤った判断がなされたことで、結果的に子どもを救出できなかった」と問題点を指摘した。
 宮古島の事件は一部の家庭に起こった異常な事案ではない。県内の児童虐待は毎年増加傾向にある。2014年度は478件で過去最多となり、13年度より130件、37%増加した。ネグレクト(育児放棄)が最も多い185件で、身体的虐待137件、心理的虐待134件、性的虐待22件だった。
 この件数は児童相談所が対応した事案であって、氷山の一角と捉えるべきだろう。家庭という密室で起こり、被害が見えにくい児童虐待を早期に把握して、子どもの命と人権を守ることが必要だ。
 改正児童虐待法は臨検に関して保護者への「出頭要求」手続きを省略して裁判所の許可状で実施できるようにした。医療機関や学校、児童福祉施設などは、児相の求めに応じて虐待を受けた子どもに関する資料を提供することも義務付けた。
 児童虐待には、貧困やDVなど複雑な問題が絡み合う。虐待をする親たちへの支援も必要だ。それには人員不足が深刻な児童相談所の態勢を整えねばならない。児童虐待は社会の負のひずみを映す問題だと捉え、社会全体で取り組まねばならない。