<社説>報告書修正要求 住民本位の行政に立ち返れ


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 宮古島市への自衛隊配備計画を巡り、市地下水審議会の学術部会がまとめた自衛隊配備を「認めることができない」とする報告書案について、下地敏彦市長が肯定的な内容への修正を求めていた。

 東京農大教授の部会長は「改ざんを拒否した。部会をないがしろにする行為だ」と批判した。専門家による諮問機関の意見を市長が自由勝手に書き直せると思っているのだろうか。審議会の形骸化は許されない。
 学術部会が自衛隊配備を認められない理由に挙げたのは3点だ。1点目は自衛隊施設から排出される油や薬物などが地下水に漏れ出し、恒久的に汚染する恐れがあることを挙げた。2点目は施設の設置が予防原則的に不適切だと指摘し、3点目で有事の際に施設が攻撃されれば水質汚染や地下水帯水層が破壊されると指摘している。水質学や地質学の専門家が2度にわたる審議で導き出した結論だ。
 ところが市長は「認めることができない」との記述を「懸念がある」に変更を求め、理由を示す1点目の「恒久的に汚染する恐れ」と2点目の「予防原則的に不適切」と3点目の全文の削除を求めたのだ。
 その理由について市長は「部会に与えられた権限を超えている」と述べている。越権行為をしているのは市長自身ではないのか。
 審議会の設置は市地下水保全条例に基づいたものだ。条例は地下水について「宮古島市住民の健康で文化的な生活および経済活動に欠くことができないもの」と位置付けている。さらに市長の責務として「地下水の保全に係る施策を実施し、地下水水質および地下水量の保全を行う」と定めている。
 地下水保全のためには自衛隊施設の建設を「認めることができない」とする結論を市長は改ざんしようとした。「自衛隊基地にかかわらず、全部の施設が建設できないことになる」と釈明したが、地下水保全より自衛隊配備を優先したとしか受け取れない。
 その後、防衛局は水道水源保全地域内にあった予定地の図面を書き直し、保全地域にはみ出さないよう規模を縮小して隣接地だけの計画に変更した。すると市長は条例に基づく事前協議の必要はなくなったと主張している。攻撃されれば地下水帯水層が破壊される可能性がある。事前協議が必要ではないか。住民本位の行政に立ち返るべきだ。