<社説>米軍属の薬物起訴 これが「綱紀粛正」の実態だ

 何度繰り返された光景だろう。「綱紀粛正」の、これが実態だ。

 覚せい剤取締法違反や大麻取締法違反の容疑で米軍属の男ら4人が逮捕・起訴された。逮捕は4月上旬だ。3月には米海軍兵による女性暴行事件があり、事件直後、在沖米四軍調整官は「良き隣人・良き市民であるため、できる限りのことをする」と約束した。その言葉からわずか3週間での逮捕だった。
 「再発防止」の掛け声がむなしい。覚醒剤などの薬物は、使用して錯乱した人が罪を犯すこともある。4人の住所はいずれも沖縄市の市街地で、市民が平穏に暮らせるはずの地域だ。そんな場所で、錯乱するかもしれない薬物が持ち込まれ、使われていたのである。
 この種の事件を機に米軍の沖縄偏在が糾弾されると、決まって持ち出されるのが「犯罪率は県民より米軍が低い」という話だ。
 確かに彼らの起訴率は県民平均より低い。だが米軍人・軍属は1週間の大部分を基地内で過ごす。その間の犯罪は日本側には見えない暗数だ。当然、起訴率に含まれない。比較するなら基地内の全犯罪を公開した上ですべきだ。
 さらに言えば、基地外で起こした事件もほとんどが日米地位協定の壁で逮捕できないから、基地内での証拠隠滅や口裏合わせも可能だ。日米合同委の秘密合意により、よほど重要でない限り米軍人・軍属の犯罪は起訴しないという密約もある。起訴率は、これらの困難をくぐり抜けて辛うじて起訴できた数字にすぎないのだ。
 復帰から昨年末までの米軍人・軍属の検挙件数は5896件で、殺人・強姦(ごうかん)などの凶悪犯だけでも574件ある。この数字、米軍専用基地のない33府県は例年ほぼゼロが並んでいるはずだ。沖縄に74%もの専用基地が集中するから、多くの県でゼロで済む犯罪が、これほど押し付けられているのである。これが差別でなくて何なのか。
 米国内で軍人にインタビューした辛淑玉(シンスゴ)氏によると、彼らは「沖縄では何をしても裁かれないことを知っている。だってパスポートを持って入るのではないからね」と語っていたそうだ。地位協定で守られているという意識が犯罪を容易にしている事情がうかがえる。
 だとすれば基地内の強制捜査を可能にするよう地位協定を改定すべきだ。基地集中の是正、撤去がもっと有効なのは言うまでもない。