<社説>米軍犯罪対策 的外れの政府に失望した


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 期待はしていなかったが、あまりにも的が外れた米軍犯罪抑止対策には失望するしかない。県民の生命・財産を守るのに、政府は全く当てにならないことが分かった。

 政府の対策は主に4点だ。(1)非常勤職員による100台規模の車両でのパトロール(2)警察官100人とパトカー20台の増強(3)一括交付金などによる防犯灯や防犯カメラ設置(4)国、県、自治体などによる協議機関設置-が柱となっている。
 政府は警察力と監視によって米軍関係者の犯罪を抑止できると考えているようだが、県民の感覚とは埋め難いほどの距離がある。
 県民が求めているのは、国内法の適用除外など米軍関係者を特権的に扱う日米地位協定の改定であり、沖縄からの全基地撤去、あるいは基地の整理・縮小だ。こうした抜本的対策こそが県民の願いである。それは本紙と沖縄テレビ放送が5月30日~6月1日に実施した世論調査で明確に示されている。
 さらに犯罪の背景として、米海兵隊の新人研修がある。沖縄蔑視や差別、占領者意識丸出しの研修文書によって、海兵隊員は沖縄社会を見下すよう刷り込まれる。
 研修文書で自らを「保護者」と位置付け、駐留国への敬意もない軍人らが街中を自由に行動する。事件を起こしても基地内に逃げ込めば、地位協定が守ってくれる。これら構造的問題を放置し、どこが「犯罪抑止対策」と言えるのか。
 今後、政府の対策が始まっても実効性には疑問がある。
 大量の警察官養成が間に合うのか不透明な上、防犯灯などの運用費は地元自治体にさらなる財政負担を強いる可能性もある。
 防犯カメラは、犯罪発生後に容疑者を特定するために威力を発揮する場面もあるが、抑止効果は未知数だ。防犯カメラが住宅街などにも設置されれば、県民監視社会ではないかと危惧する声もある。
 国は常々、外交と安全保障は国の専管事項と言う。しかし米軍属女性遺棄事件後、政府が地位協定改定、基地撤退・縮小などを米側に求めたことはない。政府は外交の当事者としての資格すらない。
 そもそも米軍関係者の犯罪は、基地がなければ起こり得ない。小手先の対策を机上で練るよりも、政府は地位協定改定といった抜本的な解決策に踏み込むべきだ。できないのであれば「沖縄に寄り添う」などと二度と言うべきでない。