<社説>飲酒米兵国道逆走 これが「喪に服す」の実態だ


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 嘉手納基地所属の米海軍兵が酒に酔った状態で嘉手納町水釜の国道58号を逆走し、2台の軽自動車と次々に衝突し、男女2人に重軽傷を負わせた。

 「綱紀粛正」の掛け声に何ら実効性がないことをあらためて証明した格好だ。一方でこれは、沖縄では何度も繰り返されてきた、いわば日常の光景でもある。
 精神論を語るだけでは時間の無駄だ。戦後70年が過ぎた。もう、本当に効果のある対策を講じるべきときだ。
 自分たちは特権に守られており、米軍基地内に逃げ込めば日本側に逮捕されず、証拠隠滅も可能だ。そんな意識がふらちな行動を招いているのは想像に難くない。
 捜査に関わる特権を米軍人・軍属から剥奪するよう、日米地位協定を抜本改定すべきだ。全米軍基地に国内法を適用し、基地内での全ての捜査を可能にすべきだ。
 現場は沖縄最大の国道の、なおかつ見通しが良く、速度が出やすい地点だ。そんな場所で逆走する車に出くわした恐怖はいかばかりか。逮捕された米兵からは基準値の6倍ものアルコールが検知されている。死者が出なかったのが不思議なくらいだ。
 容疑者は「読谷村内の友人宅で酒を飲んだ」と供述している。米軍属女性遺棄事件を受け、在沖米軍が基地外での飲酒を30日間禁じる措置を講じてから1週間ほどしかたっていない。米軍の言う「喪に服す」とは、この程度である。
 日本政府は米軍犯罪対策として、警察官の増員やパトカーの増強を掲げたが、噴飯物だ。事件事故を防ぐというより、起きた事件事故の処理に当たることになろう。これで抑止策とは、もはや笑い話だ。
 安倍晋三首相はこの事故を「言語道断だ」と述べたが、うわべの言葉だけ厳しくても、実効性がなければパフォーマンスにすぎない。
 沖縄での米軍絡みの事件事故を本気でなくすなら、地位協定改定より期待できる対策がある。沖縄への基地集中をやめることだ。
 3月の女性暴行、4月の覚せい剤取締法違反、5月の遺棄、今回と続いてきた。だが復帰後、米軍絡みの事件は昨年末までで5896件もある。今回の事件も、いわば約6千分の1にすぎないのだ。
 1県だけにこれほど被害を集中させるのは、あまりに理不尽と言うほかない。政府が真剣に向き合うべきなのは、その差別性だ。

英文へ→Editorial: Reality of “period of unity and mourning” is drunk US Navy sailor driving against traffic on national highway