<社説>富山市議取材妨害 不当な言論封殺許されない

 富山市議会最大会派の自民党の会長が別の市議を取材していた北日本新聞社の記者を押し倒し、取材メモを奪って取材を妨害するという事態が起きた。

 同社は「力ずくで取材を妨害するという前代未聞の行為。報道の自由や知る権利を脅かすもので、到底容認できない」として、富山県警に暴行と窃盗容疑で被害届を出した。
 自民党会長の行為は北日本新聞社の取材妨害にとどまらず、われわれ報道全体への重大な挑戦だ。決して看過することはできない。
 会長は市役所内の会派室で男性市議にしゃがんで取材をしていた30代の女性記者を見つけた。すると「何を聞いているんだ」と怒鳴りながら近づき、ペンを持っていた右手首をつかまえて押し倒した。
 さらに左手で握り締めていたメモ用紙を無理やり奪っている。記者は月額60万円の議員報酬を10万円引き上げる条例改正案の賛否を取材していた。会長は取材を封じるのではなく、堂々と自身の考えを説明すべきだろう。引き上げに後ろめたさがあるとしか思えない。
 有権者から選ばれた公人の市議に同意を得た上で取材をする行為に、何の不当性もない。それにもかかわらず、暴力を行使して取材を妨害するなど言語道断だ。こんなことがまかり通れば、民主主義社会ではなく暗黒社会ではないか。
 米中枢同時テロが起きた2001年9月11日の夜、米軍普天間飛行場のゲート前で取材をしていた琉球新報社の記者が米海兵隊にライフル銃を向けられ、無理やりカメラを奪われ、記録カードを抜き取られる出来事が起きた。記者は返却を強く求め、武装兵は1時間後にカードを返している。これも明らかな取材妨害だ。
 昨年6月には自民党若手議員らの勉強会で作家が琉球新報など沖縄2紙を「つぶさないといけない」と発言し、議員からも報道機関への圧力を求める発言が相次いだ。
 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表した2016年の報道自由度ランキングで、日本は前年の61位から72位まで順位を下げた。
 日本の報道を取り巻く状況は厳しさを増している。だからこそ今回のような取材妨害を見過ごすことはできない。自民党会長は真摯(しんし)に取材妨害を認め、北日本新聞社に謝罪すべきだ。知る権利を脅かす不当な言論封殺は決して許されない。