<社説>健康寿命、沖縄下位 長生きの質向上に取り組め


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 長寿日本一から転落した沖縄県は、その復活へ向け取り組んでいる。しかし、単純な生存年数ではなく、健康に生きるという長生きの質にもっと着目しなければならない。そう実感させる調査結果だ。

 平均寿命(余命)のうち、介護を受けたり寝たきりになったりせずに健康に日常生活を送ることができる期間を示す「健康寿命(余命)」が占める割合が、47都道府県中、沖縄県は男性が最下位の47位、女性が46位である。茨城県立健康プラザ研究員の栗盛須雅子聖徳大教授らの調査で分かった。
 沖縄県の平均寿命(2010年)は女性が87・02歳で3位、男性は79・40歳で30位だ。
 平均寿命に占める健康寿命は沖縄の女性が83・7%、男性が90・4%である。単純にいうと、女性は寿命の16%、男性は寿命の1割の年月を要介護や何らかの障がいがある状態で過ごす。高齢者の生活の質が低くなることを意味する。
 さらに介護者の増加は、近親者の介護離職という新たな社会問題を生んでいる。
 介護離職は全国で約10万人に上る。厚生労働省の調査では、うち6万人は仕事を続けたいとの希望に反してやむを得ず離職した人である。さらにそのうち約1万5千人は、家族が介護施設に入所できなかったり在宅介護サービスを利用できなかったりしたことが原因だった。
 介護のために職をなくした人が貧困に陥る事案も多く報告されており、安倍晋三首相は今年の施政方針で「高齢者と現役世代が共倒れする現実もある。日本の大黒柱、団塊ジュニア世代が大量離職すれば、経済社会は成り立たない」と危機感を示している。健康寿命を延ばすことは社会全体の要請と言える。
 沖縄県はがん、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病による死亡が約5割を占める。喫煙や過度の飲酒、食生活などが最大要因だ。メタボリック(内臓脂肪)症候群の該当者と予備軍も男女とも全国ワーストだ。
 1995年に「世界長寿地域宣言」をした沖縄が「不健康短命地域」になりつつあるのだ。
 生きている間は元気で、自分のことは自分で行い、他人の世話になることなく過ごしたい。多くの人の願いだ。延命だけでなく延健康寿命に向け、官民挙げた取り組みが望まれる。