<社説>熊本地震2カ月 教訓生かし生活再建を


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 熊本地震の本震からきょうで2カ月を迎えた。12日に八代市で震度5弱を観測するなど、なお余震が続いている。熊本県は既に梅雨入りしており、土砂災害など二次災害に警戒しながら、生活再建を進めてほしい。

 被災者向けの仮設住宅は熊本県の16市町村で計2951戸を整備中で、完成は3町の計232戸にとどまっている。想定以上に膨らんだ建物被害と、用地の確保が難航しているからだ。このため避難所には約6200人が身を寄せている。夏を迎える前に住宅の確保に全力を挙げる必要がある。
 熊本市教育委員会は市立小中学生約6万1千人を対象とした熊本地震による影響調査で、3%に当たる1834人がカウンセリングが必要と認められたと発表した。地震で受けた心の傷が深刻にならないよう万全を期したい。
 熊本地震は過去の地震被害を教訓として生かすことができなかった。「大地震は来ない」という意識が強かったと指摘されている。
 例えば、1978年にマグニチュード(M)7・4を観測した宮城県沖地震の際、ブロック塀の倒壊で犠牲者を出した。同県はその後、ブロックの中に鉄筋を入れる耐震対策を講じたため、東日本大震災ではブロック塀による被害は少なかった。ところが熊本地震は宮城県の教訓を生かせず、ブロック塀の倒壊が相次ぎ、犠牲者を出した。この教訓を踏まえ、熊本だけでなく、全国各地でブロック塀の総点検が必要ではないか。
 熊本地震で被害を受けた建物は、木造の一戸建て住宅が目立つが、鉄筋コンクリート(RC)のマンションやビルも少なくない。熊本の場合、建築基準法で要求される耐震性は関東や東北と比べ1~2割低く設定されているため耐震性が低い。耐震化の遅れが多くの被害を招いた側面もある。
 沖縄は3割低い設定で全国最下位。専門家によると、仮に熊本地震と同規模の地震が沖縄で発生したら、熊本よりも被害は拡大するという。耐震基準の引き上げなど県独自に耐震性を高める取り組みが必要だろう。
 一方、被災した家屋のがれきの処理が進まない中、東日本大震災で災害廃棄物を効率的に処理した宮城県東松島市が職員を派遣し、効果を上げている。過去の災害の教訓を生かし、復興の道を着実に進んでもらいたい。