<社説>イチロー最多安打 新たな金字塔たたえたい


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 米大リーグ、マーリンズのイチロー外野手が日米通算で4257安打を放ち、ピート・ローズ氏の持つメジャー通算安打記録を上回った。新たな金字塔を打ち立てたことをたたえたい。

 日本での1278安打を加えての新記録は公式記録として認められず、参考記録として扱われる。このため「ローズ氏超え」には異論もある。
 だが日米通算であっても、4千本を大きく超える安打数は驚異的である。日米いずれでも活躍し続けた結果であり、記録は高く評価されてしかるべきだ。
 そもそもイチロー選手が世界最高の「安打製造機」であることは、これまでの成績が証明している。
 大リーグに移籍した2001年に首位打者を獲得し、ア・リーグの最優秀選手と新人王に輝いた。04年は262安打でシーズン最多安打記録を84年ぶりに更新した。01年から前人未到の10年連続200安打も成し遂げている。
 ファンあってのプロスポーツである。イチロー選手の日米通算最多安打記録は日本だけでなく、米国のファンも喜んだ。そのことを重視したい。
 記録達成の瞬間、パドレスの本拠地ペトコ・パークはこの日一番の歓声に包まれ、ヒーローをたたえる拍手が鳴りやまなかった。通算記録といえども、ファンがその価値を十分に認めたからこその祝福の拍手だったといえよう。
 残念なのはローズ氏の評価である。「どの競技でも別のリーグの記録を足すことはしない。自分の安打数もマイナーリーグでの安打は足していない」とし、日米通算での比較には批判的である。
 ローズ氏の見解は十分理解できる。公式記録でもないのに、自身が2位とみなされるのではないかとの思いがあるのだろう。だが、日米通算でイチロー選手に抜かれても、ローズ氏のメジャー記録が色あせることはない。ローズ氏はファンが認める偉大な記録に寛容であってほしい。
 イチロー選手は今回の記録について「ここにゴールを設定したことがなかったので、実はそんなに大きなことという感じはしていない」と淡々と語っている。
 あと21本に迫った大リーグ通算3千安打も、イチロー選手のゴールではない。メジャー現役最年長野手の42歳がさらに安打を積み重ね、走攻守でファンを楽しませてくれることを期待したい。