<社説>南城市長虚偽答弁 議会軽視も甚だしい


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 議場で首長が虚偽の答弁をしたことが明らかになった。議会軽視も甚だしい。不誠実な態度を徹底追及すべきだ。

 南城市の公立保育所の民営化に反対し、存続を求めて署名をした市民に市長が電話をかけたとされる件で、古謝景春市長が答弁を覆した。
 10日の市議会一般質問で、古謝市長は「署名した市民に電話で確認した」と答弁した。ところが13日の答弁で「電話は自らかけていない。(市民から)電話を受けた」と改めた。
 答弁を覆した理由も理解できない。「(10日の答弁は)感情的になっていた。私が発言した通りに報じるかどうか、マスコミを試すためだった」というのだ。
 全く非常識な理由で事実に反する答弁を意図的にしたというのだ。議会答弁とはこれほど軽々しいものなのか。議員はもちろん市民をも愚弄(ぐろう)する態度だ。与野党を問わず、うその答弁を断じて容認してはならない。厳しく追及し、事実関係をただすべきだ。
 公立保育所の存続を求める市民の署名について、古謝市長は本紙に対し「(市に対する)圧力だと認識している」とも述べた。行政を預かる者として、あるまじき発言だ。市民を敵対視するような姿勢は許されない。猛省すべきだ。
 行政の施策に対し、全ての住民が賛成するわけではない。さまざまな声に向き合い、丁寧に説明するのが行政のあるべき姿だ。
 ところが南城市は、説明会を開くといった民主的な手続きを放棄したまま、公立保育所の民営化という市の方針を市民に押し付けている。市長から市民に電話をかけたと答弁した際には「請願権の侵害だ」という批判が上がった。
 県内市町村では過去にも公立保育所の民営化に対する反対の声が存在した。横浜市では訴訟も起きている。南城市はこのような経緯を教訓として生かすべきだ。
 ところが、南城市は今年3月の時点で市内に1カ所だけ残る公立保育所を民営化する方針を確認したのに、説明会を開いていない。市民の不安や不信を放置してしまったのだ。
 子育ての中核施設として公立保育所の存続を求める市民、コスト削減を進める行政が対立している以上、強引に民営化を進めることはあってはならない。「方針は絶対に変えない」というかたくなな態度では対立を深めるだけだ。