<社説>子ども未来会議発足 夢や希望かなえる社会に


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 子どもの貧困解消に取り組む全県組織「沖縄子どもの未来県民会議」が発足した。

 沖縄県の子どもの貧困率は29・9%で全国の1・8倍。子どもの3人に1人が貧困状態に陥っている。県民会議は2030年までに貧困率を10%に引き下げる目標値を掲げた。全国で例のない取り組みだ。
 行政と民間が連携して、子どもたちの将来が生まれた環境に左右されることなく、夢や希望を持って成長していける社会を実現しよう。
 県の調査によると、父親の年間収入が300万円未満の層で8割強の母親が働いていた。しかし、母親の収入がその世帯の貧困の緩和には十分寄与していないことも明らかになった。夫婦共働きをしても多くの世帯は貧困から抜け出せていないという深刻な状況だ。
 背景には、非正規労働者の割合の高さがある。沖縄の非正規雇用率は44・5%(総務省12年調査)で全国一高い。非正規労働は年を重ねても給与の上昇は見込めない。低賃金で預金もできない。健康保険や厚生年金に未加入の人も多く、教育費に回す余裕はなくなる。
 このため、官民挙げて沖縄の雇用を巡る構造的な問題に取り組むことが、子どもの貧困問題の抜本的な解決につながる。子どもの未来県民会議に経済関係団体が参加している。解決に向け知恵を絞ってほしい。
 企業にとって短期的には非正規雇用の方が人件費を抑制できるだろう。しかし中長期的に見ると、正社員として雇用して人材を育て、賃金を上げるなど待遇改善をすれば働く意欲が向上し、労働生産性も高まるだろう。ひとり親家庭の親の雇用促進にも寄与する。
 県の調査によると、子ども時代に貧しかった人が親になった現在も貧困に苦しむ例は4割を超す。貧困の世代間連鎖の傾向は鮮明だ。同じ調査で、年収200万円以下の父親は大卒で約1割、高卒で3割弱なのに対し中卒は6割に上る。
 貧困の連鎖を断ち切るには教育が鍵を握る。県民会議には、無料塾の全市町村への拡大や、給付型奨学金の拡充など児童生徒への学習支援を後押しする取り組みが必要だ。
 子どもの貧困は、自己責任では解決できない。社会全体の問題である。妊娠期から子育て、学び、就労面で切れ目なく支援し、貧困率ゼロを達成したい。