<社説>オランダ軍兵士「視察」 外国軍の使用実態示せ


<社説>オランダ軍兵士「視察」 外国軍の使用実態示せ
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 外国の軍隊が自由に出入国できる現状は明らかに異常だ。米軍北部訓練場で3月に実施された米海兵隊の訓練プログラムに、オランダ軍の海兵隊員3人が「視察」目的で参加していた。

 沖縄防衛局は取材に「承知していない」と回答した。米軍の判断で外国の軍人が入国していたのだろうか。
 外国の軍隊と米軍が行動を共にすることについて玉城デニー知事は「基地負担軽減にならない」と警戒感を示したが、当然だ。日米両政府はことあるごとに「沖縄の負担軽減に取り組む」と喧伝(けんでん)するが、第三国の軍隊の出入りは負担軽減と逆行している。
 米軍人は日米地位協定により、基地内であればパスポートを持たずに自由に日本を出入りすることができる。外務省は「日本と極東の平和と安全を維持するための活動を効果的に行うためにも必要なこと」とするが、日本と地位協定を結んでいないオランダの兵士の出入国はどのような扱いになるのか。外務省は明確に説明すべきだ。
 北部訓練場に出入りしたオランダ兵について米軍は公式サイトで公表した。外務省は県に対して、「視察だった」と報告しただけだった。
 1972年の沖縄の日本返還に際し、政府は「第三国人が訓練の目的で在日米軍施設・区域を使用することは、安保条約上認められないところである」との答弁書を出しているが、これまでたびたび県内の米軍基地では第三国軍の訓練などへの参加が明らかになっている。
 83年に嘉手納基地で実施された航空機への弾薬装着を競う競技会に韓国軍関係者が参加した際、政府は「親善目的」として容認した。2016年には英国海兵隊の将校2人がキャンプ・シュワブ、ハンセンで米海兵隊の訓練に参加した。17年にはフィリピン海兵隊がシュワブで米海兵隊と訓練したと報じられた。
 外務省は視察など訓練以外の活動については認められる場合があるとし「個々の事案に即して判断される」とする。しかし、判断の基準などは国民に示されていない。
 米海兵隊は中国を意識し、小規模部隊を島しょ部に分散させる「遠征前方基地作戦(EABO)」に向けた訓練を北部訓練場などで実施している。北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に対して訓練を紹介する目的もあろう。しかし、日本政府が把握していない外国の軍隊の出入りをなし崩し的に認めてよいのか。使用実態や規模によっては近隣住民への新たな基地負担になりかねない。
 第三国の兵士による事件事故が起きた場合は被害補償など地域住民に直接関わる問題にも発展する可能性がある。公表されていない事例も含め、政府は第三国の軍隊による基地使用の実態を明らかにすべきだ。当然、根拠のない第三国の兵士の入国を安易に認めてはならない。