<社説>「指導死」防止取り組み 実効性伴う対応策目指せ


<社説>「指導死」防止取り組み 実効性伴う対応策目指せ
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 2021年にコザ高校2年の空手部男子生徒が部活動顧問から執拗(しつよう)な叱責(しっせき)を受けて自ら命を絶った問題で、県教育委員会は現時点での取り組み状況をまとめた。県が設置した第三者再調査委員会の提言を基に議論を重ねてきた。

 「指導死」の防止に向けた考え方や方策が示された。実効性ある指針や対処法を目指して、引き続き具体的な議論を重ねてほしい。悲しい出来事を二度と繰り返さないという決意が学校現場と教育行政全般に求められていることを忘れてはならない。
 第三者再調査委が今年3月にまとめた調査報告書は男子生徒と顧問が「支配的主従関係」にあったと指摘し、再発防止に向けて、生徒の人権尊重を最重要とする学校体制の確立を促した。その上で「子どもの権利条約」の理念の浸透を図るための研修や「イエローカード」など不寛容な指導法の廃止を提言した。「文武両道」などの校風の見直しにも言及した。
 提言を踏まえ、県教委は(1)生徒の主体性を最大限尊重する指導の徹底(2)生徒の意見を踏まえた校則・校内ルールの見直し(3)自死予防教育を含む人権教育の在り方について検討―を生徒指導・部活動指導の方向性に据えている。
 具体策として「イエローカード」廃止に向けた指導・助言、教職員を対象とした自死予防研修、児童生徒向けの自殺予防授業の実施などに取り組むとしている。教員の不適切指導に対しては調査期間中は指導を行わせないなどの措置を取る。併せて学校の管理職によって不適切指導への対処が恣意(しい)的にならないよう、対応指針を定める。
 児童生徒の人権尊重、教員への研修、不適切指導への対処、校風改善など、県教委の取り組みは第三者再調査委の提言を網羅している。問われるのは、その実効性をいかに担保するかだ。かけ声だけに終わらせてはならない。
 県教委はもちろん、各校の管理職や現場の教員の間で意識の共有を図りながら実施体制を確立する必要がある。児童生徒と直接接点を持つ教員は再発防止策の実践者であることを自覚しなければならない。そのためにも県教委や管理職は実施時期や期限について明確に示す必要があろう。
 学校で児童生徒と関わるのは教員だけではない。部活動で児童生徒らと接点を持つ外部指導者への対処も考慮に入れる必要があろう。県内でも外部指導者による暴言や体罰が問題となったことがある。「怒る指導」や「スポーツハラスメント」(スポハラ)を一掃しなければならない。県教委管轄外の県内私立学校の取り組みも求められよう。
 「子どもの権利条約」は差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利、子どもの意見尊重の原則を定めている。学校教育に関わる者は、この4原則の擁護者であることを改めて確認したい。