<社説>北朝鮮「衛星」失敗 混乱を招く行動やめよ


<社説>北朝鮮「衛星」失敗 混乱を招く行動やめよ
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 北朝鮮は27日午後10時43分ごろ、弾道ミサイル技術を使用して軍事偵察衛星を打ち上げ、飛行中に空中爆発を起こした。朝鮮中央通信は「1段目の飛行中に空中爆発し、失敗した」と発表した。

 政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)を沖縄に発した。この影響で沖縄都市モノレールは一時運行を停止した。那覇空港では地上業務が一時停止し、着陸した旅客機2機の乗客が降りられなくなった。玉城デニー県知事は「県民に大きな不安を与えたことは遺憾」と反発した。

 東アジアに緊張をもたらし、県民を不安にさせる衛星打ち上げを受け入れるわけにはいかない。国際社会は弾道ミサイル技術による衛星打ち上げは国連安全保障理事会決議に反するものとして非難している。北朝鮮は混乱を招く軍事行動を自制すべきだ。

 北朝鮮は昨年5月、8月、11月の3回、衛星打ち上げを実施している。5月と8月は失敗しているが、11月は地球の周回軌道への投入に成功している。北朝鮮は今年も3機の発射計画があることを公にしている。日本政府は北京の大使館ルートを通じて抗議したが、今後も打ち上げを繰り返す可能性がある。

 今回、北朝鮮が衛星打ち上げを日本政府に通報したのは27日未明であった。ソウルで開かれた日中韓首脳会談の直前のタイミングである。4年半ぶりとなった首脳会談に合わせた打ち上げ通報は日中韓の対話ムードをそぐ狙いがあったとみられている。

 会談で岸田文雄首相は「発射を強行すれば国連安全保障理事会決議違反であり、北朝鮮に強く中止を求める」と強調した。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領も会談や記者会見で北朝鮮を非難した。それに対し、中国の李強首相からは具体的な言及はなく、3カ国の温度差が浮き彫りとなった。

 会談の共同宣言は「朝鮮半島の平和と安定の維持は共通の利益」としたものの、朝鮮半島の非核化や北朝鮮の拉致問題については「それぞれの立場を強調した」との記載にとどめた。2019年の日中韓首脳会談の共同宣言にあった「朝鮮半島の完全な非核化にコミット」の記述は消え、内容は後退している。

 今回の首脳会談に対しても北朝鮮は「わが国の主権に対する挑戦で内政干渉だ」と反発し、非核化の意思がないことを表明した。核兵器やミサイルに依存する北朝鮮は今後も東アジア安全保障環境の不安定要素であり続ける。日本は関係国と連携し、対話を基調とした緊張緩和を追求する必要がある。その際、中国の対応が重要な要素となる。

 沖縄も北朝鮮の動向を無視することはできない。木原稔防衛相は先島地区での地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の配備継続を明言した。北朝鮮の脅威を理由とした在沖米軍基地や自衛隊の増強は警戒しなければならない。