<社説>辺野古工事着手10年 民主主義問い続けたい


<社説>辺野古工事着手10年 民主主義問い続けたい
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 米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古への新基地建設で、沖縄防衛局が2014年7月1日に建設予定地での工事に着手してから10年となる。この間の県知事選で、新基地建設に反対する翁長雄志氏、玉城デニー氏が勝利したほか、19年の県民投票では7割超が辺野古沿岸部埋め立てに反対の意思を示した。

 しかし、政府は「辺野古ありき」を崩さず、建設工事を強行している。玉城知事は対話による解決を求めているが、政府には要望に応えようとする姿勢は見られない。これが民主主義国家と呼べるのだろうか。私たちは強い疑念を抱く。

 14年7月1日に、建設予定地にある既存施設解体工事を開始。15年10月には埋め立ての準備段階となる作業ヤード整備を始めた。17年4月に埋め立ての第1段階となる護岸工事に着手、18年12月には、辺野古側の埋め立て予定区域へ土砂投入が始まった。

 辺野古側への土砂投入量は23年11月末時点で、必要な約319万立方メートルの99.5%に当たる約318万立方メートルが投入された。しかし、新基地建設に必要な土砂総量は2017万6千立方メートルと見込まれており、これまでの使用量は15.76%にとどまっている。

 この間、翁長前知事は仲井真弘多元知事が行った公有水面埋め立て承認を取り消し・撤回したほか、玉城知事は大浦湾側の軟弱地盤の地盤改良工事に伴う防衛局の設計変更申請を不承認としてきた。これに対し政府は、県の処分を不服として提訴するなど法廷闘争に発展した。

 翁長前知事、玉城知事が訴えてきたのは、日本復帰後も過重な基地負担が続くばかりか、新たな基地負担が県民の意思に反して押しつけられ、将来まで過重負担が続きかねない「不条理」だ。

 翁長前知事は15年12月の辺野古代執行訴訟第1回口頭弁論に立ち「日本に、地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県のみに負担を強いる今の日米安保体制は正常といえるのでしょうか」と述べた。沖縄側は、地方自治、民主主義の在り方を問うてきたのだ。

 しかし、政府は辺野古に固執し、沖縄側の問いかけに応えようとしない。選挙結果にかかわらず、辺野古新基地建設を強行する姿勢があらわになっている。

 防衛局は、8月1日から大浦湾側の護岸工事に着手すると県に通知した。今月上旬には、現場海域でくい打ち作業の試験を行う見通しだ。大浦湾の軟弱地盤は難工事が予想される。工期も最短で12年かかるとされるが、難航すれば工期はさらに長引き、建設費も膨れ上がる。これでは一日も早い普天間飛行場の危険性除去につながらない。

 沖縄だけに過重な基地負担を背負わせることが、果たして民主主義国家と言えるのだろうか。国民全体でもう一度見つめ直さねばならない。