<社説>能登半島地震6カ月 「救える命」全力で支えよ


<社説>能登半島地震6カ月 「救える命」全力で支えよ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 最大震度7を観測した元日の能登半島地震から半年が過ぎた。新たな生活に踏み出した人がいる一方、生活再建のめどが立たずに途方に暮れる人たちもいる。

 地震の犠牲者は299人となった。家屋倒壊や火災などによる直接死229人に加え、避難生活で体調を崩して亡くなった災害関連死は70人に上る。死者数は2016年の熊本地震の276人を上回っている。

 被害が大きかった地域では壊れた家屋や建物がそのまま残されている。日常生活に不可欠なインフラである上下水道がいまだに使えない場所も多い。手狭でプライバシーが確保されにくい避難所での生活環境や、衛生状態の悪さが避難者の心身の負担になっていることは想像に難くない。

 このままの状態が続けば、さらに犠牲者数が増える可能性がある。被災地の実情を踏まえ、対策を急がなければならない。

 仮設住宅は、6月末時点で必要とされる7割が完成したが、学校など1次避難所にいまだにとどまる1038人を含め、避難者は今もなお2千人を超えている。

 全半壊となった住宅などを自治体が解体する「公費解体」の完了数は4%にとどまる。作業員の宿泊場所の不足や交通アクセスが不便だという背景もあろうが、あまりにも作業が遅れている。政府は復旧・復興に向けた支援のため、24年度の予備費から1389億円を支出することを決めた。早期の復旧・復興に支援を加速する必要がある。

 被災地はこれから本格的な夏を迎える。避難者に目を配り、熱中症やストレス、疲労などで新たな犠牲者を生まない取り組みが求められる。「救える命」を全力で支えなければならない。

 避難所を出た人たちへの支援も必要だ。自宅に戻れた人や仮設住宅に移れた人たちは、見回りなどの支援が行き届かない場合もある。輪島市の仮設住宅では70代の女性の孤独死が判明した。

 東日本大震災や熊本地震でも多発した孤独死を防げなかった現実を直視し、戸別訪問での見守りや声掛けなど支援の在り方などについて再考すべきだろう。

 政府は1日、被災地の早期復興を支援する拠点「能登創造的復興タスクフォース」を石川県輪島市に設置した。岸田文雄首相は発足式で「被災自治体のニーズに沿った創造的復興まちづくりを全力で支援する」と述べた。災害に強いインフラ整備と、産業や地域共同体の再生を政府一丸となって進めてほしい。

 日本は地震大国である。石川県の惨状は、沖縄にとっても人ごとではない。老朽化した水道施設の改修を進めるなど、災害時に被害が拡大しないためのインフラ整備は急務だ。加えて、ハザードマップの確認やストレスの少ない避難生活などについて、官民一体の議論を進めたい。