<社説>大浦湾くい打ち試験 無謀な作業、即時中止を


<社説>大浦湾くい打ち試験 無謀な作業、即時中止を
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 問答無用にもほどがある。対等であるべき協議の申し出を無視し、作業に踏み切る無謀な態度を許すわけにはいかない。

 米軍普天間飛行場返還に伴う辺野古新基地建設で、沖縄防衛局は3日、大浦湾側に存在する軟弱地盤の改良に必要なくい打ち試験の作業に着手した。4日以降、本格的な試験を始めるとみられる。

 くい打ち試験について県は「通常の工事の着手とみなす」との立場から、工事に関する事前協議が調うまでは着手しないよう防衛局に求めた。しかし、木原稔防衛相は2日の会見で「協議の対象ではない」との見解を示しており、防衛局は県の中止要請にもかかわらず試験に踏み切ったのである。

 しかも、玉城デニー知事が、米兵による2件の性的暴行事件に関する情報伝達がなされなかったことに対する抗議で上京している最中の試験着手である。あまりにも県を軽んじるような態度だ。防衛局はただちに作業をやめ、県との協議に臨むべきである。

 そもそも、事前協議の当事者である国と県は対等の立場であるべきではないか。

 事前協議は、仲井真弘多元知事による2013年の埋め立て承認に際して付した「実施設計に基づき環境保全対策、環境監視調査、事後調査などについて詳細を検討し、県と協議すること」との留意事項に基づいて実施される。埋め立て工事による環境への影響を監視し、対策を取るための仕組みであった。

 ところが事前協議は政府の都合で運営されているのが実情だ。15年、協議継続を求める県を振り切り、防衛局は辺野古の護岸工事に着手している。今年1月の大浦湾側のヤード(資材置き場)造成工事では県が協議を申し入れたものの、防衛局は「ヤードは協議の対象外」と主張し、工事を強行したのである。

 国と県との協議において、大規模な海洋埋め立てという環境へのダメージを受ける県の意向は最大限考慮されるべきだ。協議打ち切りを判断したり、協議の対象となる工事を選別したりする権限を国側が握っているようでは対等な協議など不可能である。国との主従関係を県に強いるような協議の在り方は見直さなければならない。

 昨年12月、軟弱地盤改良に向けた設計変更承認の代執行訴訟で国が勝訴して以降、大浦湾側で急速に工事が進んでいる。1月のヤード造成工事に続き、5月にはサンゴ類の移植作業を始めた。8月には護岸建設に着手する。

 工事の加速化で国と対峙(たいじ)する県を牽制(けんせい)し、県内の反対運動を抑え込む狙いがあるのだろう。しかし、軟弱地盤の改良で工事の長期化が予想される。新基地建設に固執するのではなく、仲井真県政が要求したまま実現していない「普天間飛行場の運用停止」を追求することが現実的であり、国に求められる解決策だ。