<社説>安和抗議に「妨害行為」 決めつけ避け検証尽くせ


<社説>安和抗議に「妨害行為」 決めつけ避け検証尽くせ
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 辺野古新基地建設に使う土砂を搬出する名護市の安和桟橋前で起きた交通死傷事故を巡り、沖縄防衛局は15日、安全対策の実施を沖縄県に要請した。要請書の中で住民らの抗議活動について「民間人に対して危険・危害を及ぼす妨害行為」と問題視し、県に対策を迫っている。

 警察の捜査が続き事故の原因は明らかになっていない。それにもかかわらず、抗議活動に非があるような決めつけは避けるべきだ。「安全対策」を求めることと、反対を表明する権利を排除することは別問題である。

 何より基地建設に反対する市民運動を「妨害行為」と呼ぶことは疑問だ。国策に異議を唱える主権者への敵意が表れていないか。不法行為であるかのような印象が広がれば、反基地運動に不当な非難が集まる恐れがある。

 事故は6月28日、安和桟橋の出口付近で埋め立て用土砂を運ぶダンプカーが左折する際、抗議活動の女性と警備員に衝突した。警備員が亡くなり、女性も大量の内出血で命の危険があった。県への要請で沖縄防衛局は「(女性が)警備員の制止を聞かず、トラックの前方車道上に出た」という認識を示した。

 一方で、全日本建設交運一般労働組合沖縄ダンプ協議会は、辺野古新基地に使用される土砂搬出の効率を優先したことが原因だとして、防衛局に現場の安全確保を申し入れている。これまでは1台ごとにダンプを出していたのが、2台同時になっていたと誘導方法の変更を指摘している。

 抗議運動の参加者からも、政府が「代執行」に踏み切って大浦湾側の工事に着手した1月以降、土砂の搬出頻度を上げるため強引な車両の誘導が増えたとの指摘がある。

 原因究明や再発防止には、発注者の沖縄防衛局の検証や対応も求められるはずだ。

 辺野古新基地は県民投票で投票者の7割が反対し、県は大浦湾側の軟弱地盤の存在により期間や工費が大きく膨れ上がる問題を指摘する。直近では大浦湾側の4件の護岸建設で、着工前の変更契約により工事費が大幅に増額されていたことも明らかになった。それでも民意を無視して工事は強行されてきた。

 安和桟橋やキャンプ・シュワブゲート前が、国策と民意がぶつかる最前線となっていることは間違いない。反対の声を粘り強く上げてきた市民たちは座り込みや牛歩など非暴力の抵抗の形を模索してきた。表現や思想・信条の自由という主権者の正当な権利行使を排除するのでなく尊重することは民主国家の熟度に関わることだ。

 現場の安全を保とうとした警備員が亡くなった痛ましい事故を絶対に繰り返してはならない。だからこそ多角的で中立的な検証と、それを踏まえた安全対策が必要だ。基地建設の強行が分断や対立をあおり、現場の緊張を高めてきたことも国は自覚すべきだ。