<社説>能登半島地震8カ月 ニーズに即した復興急げ


<社説>能登半島地震8カ月 ニーズに即した復興急げ
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 自然災害に対する備えを万全にしたい。今年は最大震度7を観測した1月の能登半島地震に始まり、8月には宮崎県で発生した震度6弱の地震を受け「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発表された。8月には台風が相次いで発生し、台風10号によって九州を中心に大きな被害が出たほか、西日本だけでなく関東や東北、北海道にも大雨をもたらした。

 1日は「防災の日」だった。今後も「これまでに経験したことのない災害」の発生も予想される。自らでできる備えを改めて確認するとともに、政府や自治体には防災・減災への取り組みに加え、発生後の対応を充実させるよう強く求めたい。

 能登半島地震の発生から8カ月が過ぎたが、8月27日現在で、石川県での地震の犠牲者は災害関連死の110人を含め339人。災害関連死は新潟市で確認された2人のほか、石川県では新たに21人の認定が決まっており、地震による死者は計362人になる見通しだ。

 石川県によると8月下旬時点で県外も含め計1330人が避難している。このうち体育館や公民館など1次避難所にはいまだ437人が避難している。避難生活の長期化は、心身に影響を与え、災害関連死のリスクも高まる恐れがある。

 石川県は年内の避難所解消を目指すとしているが、仮設住宅に関しては入居希望がある全戸の完成は11月以降になる見通しだ。避難者が安心できる住居確保を急いでほしい。併せて、避難所の環境改善や大雨などの備えなど細やかな対応も求められる。

 能登半島地震の被災地では、現在も倒壊した建物が残り、復興の妨げとなっている。自治体が所有者に代わり解体・撤去する「公費解体」の制度があるが、業者選定に時間がかかることや「隣接者の同意取得」などが障壁となり進んでいないのが現状だ。解体が完了したのは8月19日時点で申請2万6774棟のうち約1割にとどまるという。

 被災したまま放置された家屋は二次災害の要因ともなる。県は所有者自身が業者を手配し、自治体が後日費用を払い戻す「自費解体」の活用を促しているが、被災者にとって重荷にならないか。

 隣家が長年空き家だったケースなど建物の管理人を裁判所が選任する「所有者不明建物管理制度」の活用を挙げる識者もいる。所有者の権利保護とのバランスが必要となるが、一日も早い復興に向けて政府は被災地のニーズに即した対応を急ぐ必要がある。

 大規模災害は発生から避難、復興までさまざまなスキームがあり、被災地域によっても課題はさまざまだ。災害がいつ起こるか予測できないのであれば、被害を最小限にし、いち早い復興につなげられるかが肝要だ。政府と各自治体が連携を深め議論を続けていかねばならない。