松川正則市長の死去に伴う宜野湾市長選は8日に投開票され、無所属で元市長の佐喜真淳氏が当選を果たした。選挙戦で佐喜真氏は、松川市政の継承を訴えたほか、松川氏の前任として2期6年務めた実績を強調してきた。市民は市政継続を選択した形だ。
佐喜真氏は、生活向上や福祉の充実、経済活性化など市民と約束した政策の実現に取り組んでもらいたい。
長年の課題である普天間飛行場の返還に関して、佐喜真氏は一日も早い閉鎖・返還と速やかな運用停止を掲げた。返還に向けては代替施設が必要として、政府が進める名護市辺野古への移設を「容認」する姿勢を明確にしている。
1996年の日米の返還合意から28年が経過しても、基地からの騒音、米軍機からの落下物や基地から派生する事件・事故への懸念に市民生活が脅かされている状況に変わりはない。普天間の早期閉鎖・返還は待ったなしだ。政府は佐喜真氏が訴える早期の危険性除去を急ぐべきだ。
佐喜真氏は辺野古移設を容認したが、県民世論は依然として辺野古移設反対を求める意見が根強い。2023年1月に本紙とJX通信社が実施した県民世論調査でも、辺野古新基地建設に反対する回答は64%だった。明星大の熊本博之教授らの研究グループが22年の県知事選以降に実施した世論調査では、72%が辺野古新基地建設は「沖縄の基地負担の軽減にならない」と回答している。
防衛省は新基地が使用できる状態になるまで約12年かかると説明するが、返還時期は明示できていないのが実情だ。難工事となる軟弱地盤の改良工事を控え、さらに遅れることも予想される。一方、在沖米軍幹部は、完成時期について「早くて2037年になる」とした上で、完成後も普天間飛行場を使用する可能性を示唆している。
このまま新基地建設を進めても普天間飛行場の危険性は長期にわたって放置される可能性が高い。移設計画には疑問符が付いている。早期返還にはつながらないと言わざるを得ない。
佐喜真氏には、辺野古新基地にこだわらず、市民が求める普天間飛行場の速やかな運用停止、早期閉鎖・返還に向け、常駐機と訓練の全国への分散など掲げた施策の実現を急ぐべきだ。推薦した自民、公明にも、佐喜真氏と共に早期の運用停止、閉鎖・返還に取り組む責任がある。辺野古に固執せず早期返還への道筋を探らなければならない。
子育て支援やまちづくりに関しては、18歳までの医療費無償化や小中学校の給食費無償化、宜野湾バイパス高架道路の早期実現などを掲げた。佐喜真氏は玉城県政を評価しない立場だが、市民生活向上に向けては県政とも連携できる政策もある。政治的対立を乗り越え、市の発展へ向けて市民目線での行政を充実させてほしい。