<社説>レバノン攻撃 国際社会で戦闘拡大防げ


<社説>レバノン攻撃 国際社会で戦闘拡大防げ
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 中東全体が危機的状況に陥った。これ以上の戦闘拡大を防ぐため、国際社会は一致して行動しなければならない。

 イスラエル軍は親イラン民兵組織ヒズボラを掃討するためレバノン南部に地上侵攻した。侵攻は2006年7月以来、約18年ぶりである。イランは今年4月に続き、弾道ミサイル180発以上をイスラエルに発射した。

 イランのミサイル攻撃は、ヒズボラ指導者ナスララ師らがイスラエルに殺害されたことへの報復である。イスラエルのネタニヤフ首相は「イランは大きな過ちを犯した。代償を支払うことになるだろう」との声明を出し、報復の意思を表明した。

 パレスチナ自治区ガザの戦火はレバノンに拡大した。憎悪と報復の連鎖を止めなければならない。イスラエル、ヒズボラ、そしてイランに強く自制を求めたい。戦闘で犠牲となるのは一般住民である。

 ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエルの地上部隊がガザに侵攻したのは昨年10月である。ヒズボラはハマス支援を理由にイスラエル北部の攻撃を続けており、約6万人のイスラエル市民が避難生活を強いられている。

 対応を迫られたネタニヤフ政権は9月中旬からレバノン攻撃を激化させ、ナスララ師らを殺害した。それに続く地上侵攻によって国境付近からの撤退をヒズボラに迫っている。

 ヒズボラがゲリラ戦でイスラエルに抵抗すれば戦闘は泥沼化し、戦火は中東全体に広がる可能性がある。極めて危機的な状況だ。報復の連鎖を止めるのは国際社会の結束である。

 これまでも国際社会は手をこまねいていたわけではない。国連安全保障理事会は先月25日、レバノン情勢を協議するための緊急会合を開いた。バイデン米政権はフランスや日本、欧州連合(EU)などと共同声明を発表し、この中で戦闘が激化するイスラエルとヒズボラに21日間の交戦停止を要求した。

 残念ながらこれらの取り組みは功を奏せず、イスラエルが地上侵攻に踏み切り、イランがミサイルで応酬したのは残念である。

 しかし、国際社会は諦めてはならない。引き続きイスラエルとヒズボラに即時停戦を働き掛けなければならない。イスラエルを支援する米国、ミサイル攻撃に踏み切ったイランも戦闘長期化を望まないはずだ。一刻も早い停戦の実現に向けて、実効性のある行動を続けてほしい。衆院解散・総選挙を控えている日本も国際社会の一員として役割を果たす必要がある。

 悲惨な地上戦を体験し、今なお米軍基地を強いられる沖縄県民も中東の危機に無関心であってならない。米軍の無差別攻撃で貴い人命を失った80年前の10・10空襲の体験を踏まえ、沖縄から停戦の実現を訴えたい。