国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が泡盛を含む日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。12月上旬に正式に登録される見通しだ。沖縄が誇る銘酒を海外に発信する大きな好機としたい。
沖縄の風土が育んだ泡盛が世界に認められる契機となる。落ち込む出荷量を上向かせ、いかにブランディングして世界に売り込むかが今後の課題となる。
日本政府は、こうじ菌を使った「伝統的酒造り」として、日本酒や焼酎造りと共に泡盛の文化遺産登録を申請していた。黄こうじや白こうじが使われる日本酒や焼酎と違い、泡盛は黒こうじのみを用いることが特徴だ。
15世紀ごろにシャム(現在のタイ)から伝わった蒸留技術を発展させてきた。沖縄戦によって各酒造所で守り育ててきた黒こうじが失われたが、研究者が戦前に保存していた菌をつなぐ形で、戦後に奇跡的に復興を果たした。
黒こうじは発酵の過程でクエン酸を出す。強い酸性にもろみが保たれるため、雑菌が繁殖しない。多湿な気候に合致した製法である。風土に培われ、苦難の歴史も乗り越えてきた酒と言えよう。
課題は出荷量の落ち込みだ。県酒造組合のまとめでは、2023年の泡盛の総出荷量は前年の22年比で3・4%減の1万2865キロリットルだった。出荷先別で見ると県内、県外、海外向けのいずれも前年より減少した。比較する22年は沖縄の施政権返還50年に当たった。節目で需要が高まり、前年から出荷量の増加は18年ぶりだった。しかし、この特需を維持して伸ばすことはできていないのだ。
23年は海外出荷分の落ち込みが激しく、47・2%減。中国や米国向けが特に減った。日本酒も国内消費が減少傾向にあるものの、海外向けは輸出額が増えている。日本の酒に対する注目度は高く、海外の購買層は拡大している。泡盛も海外需要を伸ばすことができるはずだ。
泡盛産業の振興に向け、沖縄国税事務所が取り組みを進めている。台湾を母港に宮古島を巡るクルーズツアーの乗船客を対象に、船内での試飲会や料理との組み合わせの提案などプロモーションを実施。宮古島市内で酒造所を回るバスツアーも企画した。帰国後にも楽しめるよう、台湾での取扱店の情報提供まで細かく対応している。
同じく蒸留酒のウオッカを好むポーランドに着目した事業はユニークだ。現地の卸業者やシェフ、バーテンダーらに泡盛を知ってもらい、普及を促す事業も進めている。
古酒に新酒をつぎ足していく「仕次ぎ」など、独特の楽しみ方を知ってもらうことができれば、欧米でも需要は高まるはずだ。知名度向上に向けた、またとない機会である。業界、行政が一丸となり、泡盛産業の新たなステージを切り開いてもらいたい。