<社説>大統領再びトランプ氏 米社会の分断解消目指せ


<社説>大統領再びトランプ氏 米社会の分断解消目指せ
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 米大統領選は、共和党で前大統領のドナルド・トランプ氏の返り咲きが決まった。勝利を左右するといわれる7激戦州のうち、ジョージア、ノースカロライナなどを制した。対立候補の民主党ハリス氏の勝利による初の女性大統領誕生は実現しなかった。

 大統領経験者が再び大統領職に就くのは米史上、2例目である。米国民は「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)を掲げ、景気浮揚や移民対策を訴えたトランプ氏を再び選んだ。トランプ氏の再任が欧州や中東の戦禍、そして東アジアの安全保障環境にどのような影響を及ぼすか、沖縄からも注意深く見守る必要がある。

 今選挙で懸念されたのが、トランプ氏が現大統領のバイデン氏に敗れた2020年の大統領選で生じた混乱が繰り返されることであった。21年1月に起きた連邦議会襲撃のような暴力行為は、米国の社会分断の根深さを象徴するような出来事だった。

 トランプ氏は今回も分断の惹起(じゃっき)を物ともせぬ挑発的な言動を繰り返してきた。相手候補のハリス氏はトランプ氏を「民主主義の脅威」と厳しく批判してきた。

 再び大統領となるトランプ氏に求められるのは米国社会に存在する分断の解消と、国際社会との協調であろう。16年の初当選から4年間のトランプ政権下、米国内では社会の分断や人種対立が進み、対外的には移民政策に見られる排外主義や米国単独主義があらわになった。

 トランプ政権の基本姿勢であり、今選挙戦のスローガンでもあった「アメリカ・ファースト」は米国民と世界に平和と安定をもたらすのか、国際社会は今後4年間、疑念とともに見守ることになろう。トランプ氏は国内的には融和、対外的には国際協調主義を重んじる政権運営を目指すべきである。

 ロシアとの戦闘が長期化しているウクライナやパレスチナ自治区ガザに侵攻したイスラエル、イランへの対処は、バイデン政権に続き、トランプ次期政権が直面する課題となろう。中国に対して力で応じるというトランプ氏の強硬姿勢は、東アジアに新たな緊張をもたらす可能性もある。これらも国際社会の関心となろう。

 日本国内でも、トランプ氏が当選する「もしトラ」の可能性を注視してきた。それが現実となったのである。トランプ次期政権への対応について政府は議論を急ぐ必要がある。さらなる防衛費負担を求めてきた場合の石破茂首相の判断次第では新たな政治課題として議論となろう。

 米政権の動向は、米軍基地を抱える沖縄にも影響する。玉城デニー知事は今年9月の訪米で米軍人による性暴力への対処を求めた。トランプ次期政権とも接点を築き、沖縄の声を訴える必要がある。沖縄県の地域外交の真価が問われている。